蛮勇か理か──! 麻雀メンタリスト鈴木優、孤高のドラ打ち【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・1月30日】

1月30日(月)の第2試合
U-NEXT Pirates鈴木優は3フーロのホンイツにドラの【東】を切った。

この押しに仰天したのは観戦者だけではない、チームメイトの全員が立ち上がって叫んだという。
しかし、【東】は通った。
通って、優は貴重な南場の親番を守り切った。

いったい優から見えていた景色はどのようなものであったのか?
この局仕掛けていた相手、赤坂ドリブンズ・村上の動向を振り返ってみよう。

7400点持ちとダンラスなので国士を見ながらマンズを切り飛ばし、
4巡目に【發】が重なって役役になった。
三元役、ソーズホンイツも狙ってここから【6ピン】切り。

そしてすぐに上家から出た【發】をポン。

ここから【9マン】切りとする。

このとき村上の上家はセガサミーフェニックス東城りお

現状46400点持ちトップ目なので、村上の捨て牌を見て、ソーズホンイツなら手を進めてくれそうな【7ソウ】【5ソウ】と下ろしていく。

しかし村上は鳴ける【5ソウ】をスルーした。
【發】を鳴いていて【白】【白】【中】とあるので、村上の点棒状況、チーム状況としては、【中】を重ねての三元役はまだこだわりたいだろう。

ところが次巡にも東城が【8ソウ】を抜く。

場に【5ソウ】【8ソウ】は4枚目になった。

たまらず村上もチー、打【1ソウ】とした。

そのまま巡目は進み、村上が【南】を重ねて打【西】

【9ピン】は全員の現物で持っている牌である。

ただこのとき──、村上の打牌には少々の時間があった。
これこそが対局者同士でしかわかり得ない間であり、優はそういう対人情報を決して見逃さない打ち手なのである。

「1秒で見抜く麻雀心理術」という優の著書がある。

麻雀プロの戦術書としては珍しい、相手の動作や心理に注目した内容の本だ。

もちろん優はメンゼン手順、仕掛けの構想なども掛け値なく素晴らしい選手である。
しかし、敢えてその特異性、Mリーガー随一の特長を挙げるのであれば、
人間としての相手選手の動向を読む、麻雀メンタリストとでも呼ぶべきタイプの打ち手だと思う。

村上の、場に2枚切れ【西】切りの時間は、待ち確認や選択の間ではない。
ノーテンで、場を見渡して他の牌を残している可能性が高いのだ。

それを見越してか、優は村上が張っていれば危険な【3ソウ】【2ソウ】とツモ切って行く。
読んでいる。村上は、張っていないと。

そして【南】を掴む。これは自身で第1打で切っている牌だ。
村上の手牌は字牌がまだあるのは間違いない。ソーズだけでは河状況からターツが足りない。
ポンされてもこの手牌なら戦えるはずだ。

優は【南】切り。

村上がポンだ。

村上は打【9ピン】としたがまだ張ってはいない。

ここで優は上家に打たれた【2ピン】に、渋々のチーテンを取る。

さすがに終盤過ぎる。超勝負手であったが、この親番が落ちてはトップはまず望めなくなる。

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