「攻めダルマ」から
「魔王」へ、そして……
佐々木寿人が魅せた
「次なる異名」
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2023年2月24日
第1試合
東家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
西家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
北家:日向藍子(渋谷ABEMAS)
突然だが、皆さんは印象に残っている「ゲームの強いボス」はいるだろうか。
私が未だにプレイし続けているゲームに「実況パワフルプロ野球11」というものがある。
「パワプロ」ファンならおなじみ、西京大学:清本和重が初登場した作品。
名前の通り清原和博選手をモチーフに、打撃フォームやスタイルが中村紀洋選手というキャラクターで、ありとあらゆる投球をスタンドに運ぶパワーキャラ。
攻略本をして「満塁でも敬遠しろ」と言わしめる、ストーリー中のボスキャラとして多くの人にトラウマを植え付けた。
しかしこのゲームをやり込んだ人間が、真に恐怖するのは彼ではない。
もう一人のボスである栄光学園大学、その控え投手達である。
先発の久遠ヒカルこそそこまで強くないが、彼が降板して控えから出てくる投手はいずれも化け物そのもの。歴戦の猛者プレイヤーであったとしても、彼らの前では一点も取ることが叶わない。
そう。強いボスキャラというのは、案外攻めではなく、守りに定評があったりするものなのだ。
【東1局】
開局、起家の席に座った寿人。なんてことはない普通の配牌。
寿人はソウズの上を伸ばすことよりも字牌を残すことを優先して打。遠くにホンイツも見ているか。
字牌整理があらかた終わり、形が見えてきたところで目一杯にせずの打。
同巡瑞原からのポンが入る。これがなんとポンテンのマンガン、待ち。
寿人の手牌に光る。瞬間は出ないものの、手が進めばいつ出てもおかしくない。誘い水のように引いたのは。ここでをリリース。
ポンされていたネックのが解消される引き。いよいよ打の危機が迫る。
なんてことない瑞原の現物の引き。これは当然ツモ切る一手……
?
ここは引きでスリムに受ける形とした。
さらに次巡、引いてきたのは。これもなんてことない、瑞原に現物の不要牌……
!?!?
を切って完全ベタ降りを敢行だ!!!
なぜなのか、ここで時を戻そう。
寿人が注目したのは瑞原の上家、松ヶ瀬の手出し。
瑞原にの仕掛けを入れた後、と猛烈な押しを見せている。
も手出しの対子落としで既に三枚見えている以上、ドラがいっぱいの七対子という線もない。
考えられるのは一つ。
そう、本気(ガチ)の国士無双だ。
寿人がベタ降りを敢行した。まさに松ヶ瀬が聴牌というタイミングで引いてきた破滅への誘い。
一歩間違えれば、松ヶ瀬に32000を献上する可能性があった。
返す返す秀逸なのは、前巡のを引いての迂回だろう。
この時点では松ヶ瀬に一枚も?九牌が余っていない。自身は親番。ぐらいとフラッと打っていれば、もう次巡のがどう転ぶかわからなかった。
寿人は松ヶ瀬の押しっぷり、そして空気感から危険を察知。
「国士無双なんて、聴牌していないことの方が多い」という理を振り切り、自らの判断に身を委ねた、委ねることができたのだ。