チームのために
ファンのために
茅森早香、
悲痛なる戦いで示した
不死鳥の誇り
文・東川亮【木曜担当ライター】2023年3月16日

大和証券Mリーグ2022-23、大詰めを迎える3月16日の第2試合は、今シーズン4度目の女性対決、子を持つ母同士の対戦だった。

U-NEXT Piratesからは、初戦を制してMVPへの挑戦権を得た瑞原明奈が、Mリーグ4シーズン目で初の連闘出場となった。

そんなことは、どうでもいい。
茅森早香に、セガサミーフェニックスを応援する全ての人たちにとって興味があるのは、目の前の対局に勝って可能性をつなげることだけだ。
第2試合
東家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
南家:二階堂瑠美(EX風林火山)
西家:黒沢咲(TEAM雷電)
北家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
「一日二跳」がつなぐ希望

茅森の思いとは裏腹に、試合は序盤から黒沢、瑠美とアガって進んでいく。迎えた東2局1本場、茅森は最初の手番で引いた孤立のを残し、
を切った。この手は現状ドラも赤もないどころか、3から7の牌が1枚もない。決して恵まれているとは言えない材料を生かして打点を作るなら、チャンタやジュンチャン、三色といった手役を狙うことになる。そして、いずれの手役にも
は2枚もいらないので処理。茅森の構想力がうかがえる一打である。

もちろん、うまくいくことは少ないのだが、決まったときの攻撃力は大きい。残したに
がくっつき、

なんとわずか6巡で待ちリーチ、あの配牌がピンフ高目ジュンチャンという大物手に化けた。

リーチ時には、瑞原の手もかなりまとまっていた。ゆえに一発で打ち出された。

茅森の掲げる目標は「一日一跳」。ハネ満一発では不服な状況だが、1回目がなければ2回目もない。リーチ一発ピンフジュンチャンのハネ満で、まずは茅森がトップへ向けて大きく加点する。

その後、黒沢に7700、瑞原に12000と大きな放銃が続いてしまったが、東4局1本場では一色手に狙いを定め、チンイツ赤でこの試合2度目のハネ満をツモアガリ。持ち点を回復して、南1局、最後の親番を迎えた。

大きく勝つなら、ここがラストチャンスだ。
スタイルを変え、泥にまみれ、それでも天才は可能性を追った

逆転を期する親番、茅森の配牌は、決して良いとは言えなかった。

良かったのはこっちだ。黒沢が1巡目で既に1シャンテン。茅森の親番は風前の灯火に思えた。

ただ、黒沢が好形高打点のテンパイを模索していくなかで、茅森もカンチーから仕掛ける。茅森としては、親番をノーテンで落とすわけにはいかない。局も中盤に差し掛かっており、まずは安くてもアガリ、最低でもテンパイでの連荘を狙う。

先制テンパイは黒沢。紆余曲折はあったが、役ありでダマテンが利く形になった。黒沢としても、だいぶ離れているとはいえ、目下のライバルであるフェニックス・茅森の親は落としておきたい。

茅森は終盤になってもテンパイできていなかった。そこへ引いてきたでターツ選択。

茅森はを切った。
ターツは
がフリテンで3枚切れだが、一方で読みからは外れやすい。ポンよりもチーのしやすさを優先した格好。
チーは役なしだが、それも辞さずの構え。

瑞原から切られた最後のを鳴けてテンパイ。いわゆる形式テンパイだが、実際に対局している当人にとっては、全てが見えていないがゆえの恐怖感がある。

黒沢視点での全体牌図がこう。ポイントとなっているのが、ドラの中が自身の目から全く見えていないことだ。茅森の手はカンチー
チーでタンヤオが否定されており、
4枚見えで一気通貫もなく、
4枚見えで789三色もない。678三色の可能性があるにはあるが、それよりも現実的にアガリ役があるとしたら、やはり
や
といった役牌を使った形が濃厚である。

故に、このドラは打てない。

茅森が一人テンパイで加点し、親番をつなぐことに成功する。

次局も、瑞原がドラのをポンしている状況で中盤に
をポン。この段階では打点はおろか、役すら見えない仕掛けである。タンヤオだとしても遠すぎる、平時の茅森であれば絶対に鳴かないはずだ。たとえ他家にアガられて親番を落としても、残る3局で逆転すればいいと、ひょうひょうと構えているだろう。
