白鳥翔
意図と意志が成した
単騎の一刺し
文・東川亮【木曜担当ライター】2023年4月13日
朝日新聞Mリーグ2022-23セミファイナルは、15日の開催で各チームが20試合を戦う。全チームの試合数が並ぶのは3日消化ごとになるので、基本的には3日を一区切りと考えて日程を見ていくといいだろう。
4月13日の第2試合が終わると、最初の区切りを迎える。まだ4試合、されど5分の1。どのチームも、今のうちにポイントを積み上げておきたい思いは同じはずだ。

第2試合
東家:二階堂瑠美(EX風林火山)
南家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
北家:黒沢咲(TEAM雷電)
構想通りに導かれた最終形

東2局。
白鳥はメンツこそないもののターツが豊富な手をもらうと、第1打でトイツのを切った。既にメンツの種は豊富にあり、ドラが
であることを考えると、
を横に伸ばすなら1枚で十分。一見すると切りにくそうに見えるが、他のところはメンツや手役を狙うことを考えると、非常に理にかなった一打と言える。

ドラ受けで1枚浮かせただったが、
と引くなら話は別だ。既に三色の1シャンテンということでトイツ落としを見せる。相手からすればかなり警戒度が増す切り出しに見えているだろう。極端に手が早いか、ドラが重なったか、いずれにせよつまらない手ではない。

ピンフがつく引きはテンパイ形としては絶好。
待ち、高目三色は文句なくリーチだ。

ただ、そこに瑠美も追いつく。タンヤオ赤の待ち。リーチの白鳥が
を切っているということで、ここはダマテンに構えた。

さらに内川もテンパイ。ただ、のリャンメン待ちに取るなら、出ていく
は2人のロン牌だ。

内川はリャンメン待ちではなく、のシャンポン待ちでリーチをかけた。マンズの上目の情報はほとんどないなかで、現物待ちのケアか、当たるなら安いほうアガるなら高いほう、というポジティブな意識か。いずれにせよ、
を打っていたら白鳥に満貫の放銃となっていた。


内川の粘りもあったが、最後は白鳥が瑠美から3900を出アガリ。加点して局を進めることに成功する。

次局も白鳥の選択が面白かった。2巡目にして雀頭のない1シャンテンとなると、次巡、孤立のに
がくっつく。後の好形のなりやすさ、そしてドラ重なりを期待して
を切るのがオーソドックスだろうか。

白鳥の選択は、少しひねった切り。内に絞るルートを遮断する代わりに、外側の待ちでのアガリを狙った選択。

を引いて、ドラ
を切っての
単騎待ちリーチ。打点的にはペン
、あるいは
単騎にすれば満貫以上の打点が確定するが、
単騎でもツモって満貫、出て9600と、それほど打点的に落ちるわけではない。そして
は自身で切った
のスジというだけでなく、
が複数枚見えている相手からは多少打たれやすい牌でもあり、アガリ率は雲泥の差だ。

特筆すべきは、このリーチ選択をノータイム、一切のよどみや逡巡なく行ったことだ。時間をかけないからこそ、相手に手の内を読ませる隙を与えない。引きか、もしかしたらその前からこの最終形をイメージしていたことがうかがえる。

黒沢は、が当たる可能性も頭によぎっていたという。しかし、
での放銃なら少なくともドラはまたがない。放銃しても軽傷で済む期待があったかもしれないが・・・

リーチ赤、そして暗刻の
が裏ドラで、まさかの18000。
と
(鳥)が暗刻で、誰が呼んだか「白鳥リーチ」。それはどうでもいいのだが、とにかく
単騎に照準を絞った白鳥の打ち筋が見事だった。
怒りに燃えるセレブの逆襲

手痛い一撃を被った黒沢だったが、彼女がこのままで終わるはずがなかった。
内心はかなり穏やかではなかったという。

南2局、瑠美のリーチに対して追っかけていき、一発でツモって満貫。まずは反撃の狼煙を上げる。

そして、圧巻だったのが南3局だった。黒沢が7巡目にテンパイ。リーチダブで打点は5200からと十分、ひとアガリで3着に浮上してオーラスを迎えられる。待ちもリャンメンで悪くはない。

しかし、黒沢はこのテンパイを外すのだ。普通に考えたらあり得ない。でも、じゃあ普通ってなんだ。

黒沢にとっては、ハネ満倍満まで見える手を満貫で妥協することのほうが、普通ではないのだ。

我々凡人には、河に並んだがアガリ逃しに見えるだろう。だが。

彼女に見えていたのはきっと、この最終形にたどり着く道すじなのだ。ダブホンイツイーペーコー、ダマテンでもハネ満確定の大物手、アガれば2着はおろか、ツモや白鳥からの直撃ならトップすら狙える位置につけられる。

局はここから急展開で動く。まずは瑠美、チートイツの1シャンテンからドラを重ねてテンパイ、待ちでリーチをかける。これが山に1枚。
