誰もが目を奪われてく、
君は完璧で究極の……
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2023年5月12日
第1試合
東家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
南家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
北家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
1、6:4のその先へ
麻雀というゲームへの理解が進めば進むほど、強くなればなるほど、そこには置き去りにされていくものがある。
例えば無意味な反省、追えない手筋といったような、正しく強くなるために不必要なものたち。結果論を言っていて勝ち越せるゲームではないということを理解するからだ。
やがては事象に対して抱く感情さえも、不必要なものだと理解し始める。
初心者の時に抱いたであろう何もできないラスを引いた時の悔しさ、捲り合いに負けた時の悲しみ、理不尽な放銃への怒り。
これらに揺さぶられることなく、いかに平常時と同じ選択を出力し続けられるかが”強さ”であると。
麻雀というゲームの運要素、確率についての研究が進む昨今、”必勝”が砂上の楼閣であることは多くの人が理解している。
理解しているがゆえに、誰も「麻雀の選択、全部正解の方を引きたい!」とは言わないのだ。
……この男を除いては。
”放銃率0%!”、”選択全部正解のほうを選びたい!”。そんなある種子供じみたわがままを、真剣に言ってのける。
もちろん白鳥だってそれが現実的に厳しいことは理解している。それでも諦めたくない、やれること全部完璧にこなしたいという、言わば麻雀プロとしての決意表明。
「最善を尽くして負けました」はもう口が裂けても言いたくない。
セミファイナルとファイナルの重要な局面を数々乗り越えてきた、チームと仲間に託されるだけある男の背中がそこにはあった。
2、6:4を乗り越えて
【東4局】、寿人が少し抜け出した場面。
例えばこの手牌、牌効率ならを切ってペンの受け入れを残すのが聴牌効率マックスである。
しかしを残せば678、789どちらの三色の打点も見られるうえに、ピンズやソウズが両面変化することで結果的に和了り率がアップする。
トップとの点差がある東4局ということを考えれば、AI的に見ても切りが6・切りが4といったところだろうか。こういった判断は当然間違えない。
ペンでのピンフのみ聴牌こそ逃すが、見事「高めでアガればトップに大きく近づく勝負手のリーチ」までこぎつけた!
結果は安めツモながらも、手順に一切の隙がない白鳥。
続く【南1局】では寿人の先制。
ピンズの下が通りそう以外、ほぼ情報が落ちてないリーチだ。
白鳥の手牌がこの形。まっすぐ行くなら一発目に引いたツモ切りだが、さすがに自身から四枚見えの裏筋ドラマタギを赤で放銃しては何点持って行かれるか分かったものではない。
手牌に安全牌もないため、おとなしくいくが6に見えるが……
白鳥が導き出したのは4の!
が入っての待ちならば和了りがあるとみてのプッシュだ。
ドラのを引いて、再びのターツ選択。
安全に落とせるのはだが、この形になったのなら……
切りが6だろう! 寿人のリーチに誰もを合わせないことからを重要なターツとして見た。
タンヤオ変化となるを引いた後、喉から手が出るほど欲しいをチー!
待ちのマンガン聴牌で見事追いついたが……
ここは寿人のツモアガリの形となる。