空星がテンパイしたこの状況。
確かにここでを切って欲しいと第三者視点で見ている人は思ったかもしれない。
しかし、松本の指摘はそこではなかった。
それよりもっと先。
この段階で、を切るべきだったとそう話したのだ。
白雪は確かにホンイツに向かっていそうではあるが、まだソーズはおろか字牌すら余っていない。
今白雪にこのをロンと言われる確率は、限りなく低いのだ。
仮にこのを切って、ポンと言われたらその時オリれば良い。
白雪は親ではない。白雪が跳満程度をツモったところで、局は進み、まだまだ空星のトップは揺るがないのだから。
「三段目のこの状況で、テンパイなんだから切れとか、四暗刻なんだから切れとか、そういう乱暴なのは違うと思う」
松本は優しく、空星に指導する。
そうなのだ。配信者だから、とか。役満チャンスだから、とか。
そういったことは一旦置いておいて。
真摯に麻雀に向き合って、ここはこうできたよね、と指導するのは、とても素晴らしく、これぞ神域リーグという姿だったと思う。
空星も松本監督のことが、より好きになってくれたに違いない。
この第12試合。
神域リーグファンの間でこの大三元の話題は、瞬く間にSNSを席巻した。
空星きらめは牌に愛されていると、そう示したのは間違いないし、それは疑いようのない事実だ。
しかし、どうか。
その裏であったこの事を知っておいて欲しい。
牌に愛され、奇跡を起こした空星きらめが。
もっと自ら牌を愛するために歩み寄った軌跡を。
夜空に浮かぶ星が輝いて見えるのは、周囲の環境があるから。
次はもっと、煌めけるように。
空星きらめと麻雀の物語は、始まったばかりなのだ。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924