零れ落ちた役満 高宮まりの掌に残った宝石【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・4月10日】

セミファイナルの開幕戦、4月10日(月)第2試合KONAMI麻雀格闘倶楽部より出場したのは高宮まりであった。

チームはセミファイナルシーズン、首位でのスタート。
高宮個人はレギュラーで194.1ptを稼ぎ、その怯まない攻撃スタイルが十分に発揮された今期であった。

しかしこの試合の南4局1本場、高宮にとって痛恨の出来事があった。

高宮は10巡目のこの手牌から、アンコの【1マン】を1枚外す。

自身は2着目、ダントツ目の渋谷ABEMAS多井隆晴とは26200点離れており、着キープ以外の目標を見出しにくい状況だ。

【7ピン】が特にチートイツの待ち候補として優秀なわけではないが、高宮目線では生牌
トイトイ系を狙うとしても、ドラの【7マン】【4ピン】【4ソウ】とまずポンしにくい牌が残る。

もちろん【7ピン】を切る人も多そうだが、チートイツに絞って単騎の受け入れを増やすこと自体は方針としてはわかる。
自身から【1マン】【4マン】が5枚見えており、王様状態の多井が早々に【5マン】を切っていることから、
多井への裏スジを切り遅れたくなかったのだろう。

すると高宮の次のツモが、なんとドラの【7マン】

13巡目には3つ目のアンコを成すツモ【4ピン】

17巡目、最後の高宮のツモが【北】で──、四暗刻が仕上がっていたことになる。

もちろん堂々のトップ逆転の結末。
これを惜しかった、という意見は当然わかる。

だが、今日まで高宮自身のプレイヤーとしての成長を感じている視聴者も多いだろうし、
2着をキープしたい高宮が、多井への警戒を優先したという意図は十分伝わる。
結果だけで無遠慮に咎められるものではないと思う。

確かに痛すぎる裏目であるし、四暗刻をアガれている人も少なくないだろう。
それくらい簡単で、望外のツモが押し寄せたことは間違いない。

麻雀の伸びというのは表裏一体なのだと思う。
攻め方が良くなったこと、点棒状況でのダントツ目への警戒心が強くなったこと。
高宮の色んな面で変化した部分のバランスが、良い結果を生んだり、裏目を生んだりして、
つくづくこのゲームの難しさを感じさせる。

ただ──、このツモ番のなくなった高宮に訪れた、ある選択の機会があった。

王様状態で親続行を当然狙っている多井が、最終手番で【4ピン】を切ってきたのである。

東家の多井が切った後は、南家のU-NEXT Pirates鈴木優ハイテイの手番があってそこで終了。

この【4ピン】を、優は誰からも鳴きがないことを十分待って、「チー」と言った。
優は高宮と6700点差の3着目、当然テンパイ料で詰めることは重要である。

ここである。

高宮の手はこの瞬間こうだった。

このシーンでいち早くツイッター上で指摘したのが、元U-NEXT Pirates朝倉康心であった。

四暗刻逃しより、【4ピン】ポンかカンで優さんのテンパイは防げたことに意識が行ってしまう──」

高宮の手には、役満を逃したアンコの【4ピン】がある。
一番いいのは、多井の切った【4ピン】をダイミンカンして【北】あたりを打つことだった。
そうするとその打【北】ホウテイ牌になり、誰にもツモ番が回らず終了になる。
これに瞬時に目が行くのは、やはり天鳳位朝倉康心の慧眼といったところだろう。

この状況、四暗刻を逃した高宮にまだ残された思考要件は、

・東家の多井がテンパイで続行しようと目論んでいる
・その場合、最後の切り番でも強い牌を打って、優に鳴かせることもあり得る
・それが自分で邪魔ポン、カンできる牌なら、反応できるように準備しておく

であった。

麻雀の本質的に求められる素養は、状況に合った手組みだったり押し引きだったりに尽きる。
もちろんそれが現在の高宮の強さであり、魅力であることは論を俟たない。

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