【 #神域リーグ2023 第7節第19試合観戦記】たった2枚 そのほんの少しの幸運は 手を伸ばし続けた 咲乃もこの掌(てのひら)に【文 #後藤哲冶 】

実際、【5マン】は放銃牌だった。この回避にはアトラスの控室でも賞賛が飛び交う。
天宮がテンパイをとりきったことで点差は開いてしまったが、それでもまだまだ十分トップを狙える位置。

南2局

咲乃に良い手が入った。
リャンカンとリャンメンのイーシャンテン。【4マン】【6マン】を引ければピンフのリーチが打てる。

ドラの【2ソウ】もツモ切り。
良い判断だと思う。【2ソウ】を残すと、必ずどこかの受け入れをロスしてしまう。ここは、受け入れ枚数優先でドラをツモ切り。

「本当に緊張する! 頑張れー……!」

自らを鼓舞するために、激励の言葉を口にする。
イーシャンテンまでは早かったが、なかなかテンパイまでが遠い。
トップが見えているからこその独特な緊張感が、咲乃を襲っている。

この【6ピン】も、【3ソウ】対子落としの後に【7ピン】を切ってきている白雪には相当怖い牌。
それでも、咲乃は切り飛ばした。ここをアガれば、喉から手が出るほど欲しいトップが見える。
どこかで手を伸ばさなければ、トップを取ることはできないと、咲乃は知っている。

テンパイが入った。ピンフ赤1。待ちの【6マン】【9マン】も相当良く見える。
迷いなく、咲乃がリーチ。
何度目かわからない。咲乃がトップを勝ち取るためのリーチ。

白雪には、勝負手が入っていた。
【3ソウ】を対子落としして、ホンイツのテンパイを組んだのだ。【中】で8000点になるこの手を、そう簡単にはオリられない。

【9マン】を一発で捉えた。
リーチ、一発、ピンフ、赤。これで満貫。裏ドラは――

2枚。
8000点が、12000点に。

ここまでの咲乃の裏ドラが乗らなかった回数から考えれば、たったの2枚。

けれどそのたった2枚は。

必死に手を伸ばし続けた咲乃が満開の笑顔を咲かせるのに、十分な2枚だった。

4着に白雪。結果こそラスになってしまったが、道中の手組は流石と言う他無かった。
まだまだ個人でもチームでもプラス。ここからの終盤戦、きっと白雪らしさでアキレスを導いてくれるはずだ。

3着に、風見。
まだなかなかトップが取れない風見だが、今日の内容はとても良かったと思う。

咲乃の跳満のアガリになったこの局、風見がこの【中】を打っていたらこの局は終わっていた。
風見が8000点を白雪に献上していたら、この半荘の結果はまた違ったものになっていたかもしれない。
着実に成長を重ねる風見が、残りの節でトップを獲得することを、心から願っている。

2着に、天宮。ここまでは苦しい戦いが続いていた天宮だが、今日はようやく天宮らしさが戻って来た一戦と言えるかもしれない。
ドラゴンガールの名の通り、爆発的なアガリに期待したい。

トップに、咲乃もこ
幾多の苦難を乗り越えて、咲乃はこの場所に立つことができた。

麻雀は、理不尽なゲーム。
努力をどれだけしたからといって、必ずしも結果が伴うとは限らない。

けれど、その努力の軌跡を、手を伸ばし続けた事実を、咲乃のファンは知っている。
だから――

「こんもこー!」

この心からの言葉に、万感の想いが詰まっているのも知っている。

おめでとう。……そして、ありがとう。
このトップは、咲乃もこの努力が、悔しさに涙を流した日々が。
絶対に無駄なんかじゃなかったって証なんだ。

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