そしてこれを、多井から捉える。
5800のアガリで、なんとか、なんとか連荘。
もうその点棒はボロボロで、トップまでは限りなく遠く、着アップすら、厳しい状況。
それでも、なんとか最善を尽くそうと藻掻く、桜の奮闘。
連荘後も、状況は変わらない。
今度は渋川が仕掛けて、それに松本が打ち込みに行っている。
いつ、桜の親が、この第24試合が終わってもおかしくない。
「ちょっともう、わかんなくなってきた……!」
度重なる他家の鳴きと、難しくなる自分の手牌で、頭がパンクしそうになる桜。
もうどれ切っても同じかって、監督同士でアシストされたら無理だよって。
諦めてしまったとて、誰も文句なんか言わないだろう。
それでも。
「待って、考えることをやめるな……!」
思考放棄は、絶対にしない。桜の姫は、諦めない。
最後まで自らにやれることを探す。
桜が歯を食いしばって、懸命に牌と向き合っている。
を引いてメンツ完成。
を使えば、一気通貫なども見えなくはないが。
を手放す選択。
必死で導き出した選択は、素晴らしいものだった。もう時間的猶予はない。
どこのテンパイの牌も逃せない以上、このは切るしかない。
チャンタ模様の渋川には当たらない牌だ。
「偉い! お姉ちゃん偉い~!」「これは本当に偉い」
ゼウスの控室に懸命な応援が響く。
必死に考えて、諦めずに最後まで戦い抜く桜を、心の底から応援している。
桜に、念願のテンパイが入った……!
待ち取りは? カンはもう2枚見えていて、自分は大きめのラス目。
打点は、喉から手が出るほど欲しい。
選んだのは、ドラの単騎。
これが、一番打点が高い。
これをツモればまだ着アップの望みが――
その横に曲げたは。
渋川の、当たり牌だった。
「くっ――!」
――ギリギリで呑み込んだその声が。
どれだけ桜が本気で勝ちたかったかの証明だった。
大きな7万点越えのトップとなったのは、渋川難波。
苦しむチームを自ら支えるその姿は、流石としか言いようがない。
グラディウスは渋川の活躍もあってギリギリのところで踏みとどまっている。
対局が終わって。
桜はすぐに検討を始めていた。
反省点を踏まえて、自分がどうすればよかったのかをしっかりと学んで。
日付が変わって今日。
桜は早速麻雀を打っていた。
悔しさをすぐにエネルギーに変えられるのは、本当に素晴らしい事。
ファンはきっと、桜のこういった側面に惹かれるのだろう。