【神域リーグ2023 第10節第28試合観戦記】朝陽にいなの話をしよう 時に躓き、転びながら グラディウスを導いた少女の話【文 後藤哲冶 】

朝陽にいなという神域リーガーの話をしよう。
今年の神域リーグを最初から追っていて、過去の観戦記も読んでいる方からすると釈迦に説法かもしれないが、どうか許して欲しい。

第1回の神域リーグ開催時からドラフトに応募していた彼女だったが、第1回は指名漏れ。
それから1年間、麻雀の配信を続け、神域リーグに出たいという想いを一番発信してきたVtuberだった。

その努力が報われ、彼女はチームグラディウスの一員となった。

が、そんな彼女に待っていたのはあまりにも過酷な現実だった。
トップはおろかアガることすらままならず、敗戦。
麻雀に直接関係のない不幸すぎるシステムエラーまで発生したこともあった。

襲い来る不運は、チームメイトにも牙を剥き、一時チームが抱える負債は400近くまで膨れ上がった。

迎えた第5節。朝陽はなんとか初トップを持ち帰った。数々の不運を乗り越えて獲ったトップにファンとチームは大いに沸いた。

渋川監督と朝陽の活躍。天開と風見が苦しいながらも持ち帰った素点で、レギュラー最終節を迎えてグラディウスは-234ptまでマイナスを減らすことに成功。
しかし残り6試合で、最悪でも4位にならなければ、グラディウスはセミファイナルで敗退となってしまう。

なんとしてもトップが欲しい最終節初戦。
任されたのは、最近勢いに乗っている朝陽にいな。

1年間渇望したこの憧れの地で。
チームをファイナルに、導けるか。

第28試合

東家 鈴木勝 (チームアトラス)
南家 天宮こころ (チームゼウス)
西家 空星きらめ (チームヘラクレス)
北家 朝陽にいな (チームグラディウス)

東1局は流局で1本場。

朝陽の手が整ってきている。345三色なども見えるこの手であれば、ドラの【8ピン】を先に打ちたくなるが、朝陽はこれを残した。
【8ピン】の縦引きや【7ピン】引きで高くなるので、ギリギリまで打点を見た形だ。

そしてこの【5マン】引きでもう持ち切れないとリリース。
受け入れ枚数を減らす選択はせず、その中でギリギリまで打点を見た良い手組。

これを天宮から捉えて、朝陽が先制。5200の加点だ。

一方放銃に回ってしまった天宮も、すぐに親番で点棒を回復。
リーチタンヤオツモの2000オールで、点棒状況はほぼ平らに。

東2局1本場は、ここまで神域リーグ登板4回全トップのきらめ大明神こと空星きらめがチートイツをツモって800、1600の加点。
しかしこれも、大きく状況を動かすには至らない。

親番を迎えた空星。
悪くない配牌。ここから空星が選んだのは……

【9ピン】。とても良い判断だと思う。
イーシャンテンを崩す選択だが、ドラ表示牌のペン【7ピン】でリーチを打ちたくないと思えば、ここを外すほかない。
一旦【8ピン】を打った後に、【7ピン】引きやドラの【8ピン】引きでもう一度方針を考えなおすこともできる。

狙い通り、マンズを2メンツにして、【5ソウ】【8ソウ】のリーチに辿り着いた。
これが空星が好調の理由。ペン【7ピン】を残していたら、まだリーチにすらいけていない可能性すらある。

これを受けて朝陽。
ここまでは親のリーチに対してオリていたが、【8ソウ】を引き入れて少考。

「……やめたくないな」

通っていない【1ピン】を押した。
朝陽はくっつきのイーシャンテン。このまま空星にツモられるのを待つよりも、自分でアガりの可能性を追う方を選んだ。

次巡、引いてきたのは……【5マン】。カン【4マン】は、とてもではないが良い待ちとは言えない。
役も無く、ドラも無い。相手は親。やめる理由を挙げれば、それこそ枚挙に暇がない。

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