【神域リーグ2023 第10節第28試合観戦記】朝陽にいなの話をしよう 時に躓き、転びながら グラディウスを導いた少女の話【文 後藤哲冶 】

押し切って、テンパイを取り切った。
ギリギリで天宮が粘る。天宮もまた、負けられない。
親番を繋いでいく。

粘って繋いだ南２局１本場で、1300オールの加点。これで天宮が２位に浮上。

これ以上親番を繋がせたくないのは、トップ目の朝陽。
もう一度天宮に4000オールと言われてしまうとほぼ並び。6000オールならトップ目を捲られてしまう。

そこで引いてきた、。待ちのタンヤオピンフテンパイ。
ダマでも役があるため、親番を流す目標は達成できる。
それでも。

朝陽はリーチを打った。
まだ南２局で、空星の親番も残っている。ここでこの手を満貫以上に仕上げて、トップへの決め手にする。
朝陽のそんな強い想いが見えたリーチ。

そこに追い付いたのは、やはり空星だった。
ここまで再三にわたるリーチも空振り続け、３着目。
天宮から出たをチーして、のテンパイ。ドラ４の満貫テンパイ。

これを朝陽から直撃すれば一気にトップへ肉薄する。

この時、実は枚数有利だったのは空星の方だった。
２対４。確率としては、空星が勝つ確率の方が高い。

しかし思い出して欲しい。
今まで朝陽が、そしてグラディウスが受けてきた不運の数々は、もはや枚数の問題ではなかった。
麻雀は、常にどちらが先にいるか。１枚でもあれば、勝負はどちらに転んでもおかしくない。

大事なのは、その勝負に出るという選択を、折れずに貫き続けられるかどうか。

何度挫け、躓き、折れそうになっても。

最後まで貫き、チームを導いたグラディウスの戦姫。
勇ましく戦う姿とは裏腹に。

「あーい！」

その良く響く勝鬨は、とても可愛いものだった。

 

４着は鈴木勝。終盤は厳しい展開が続いたが、オーラスになんとか満貫をツモって素点を回復。

３着に空星きらめ。幾度も勝負手のリーチを打ったが、なかなか実らず、神域リーグ初のトップ以外。
それでもここまでに稼いだポイントは大きい。このままＭＶＰへ、チーム優勝へ駆け抜けたいところだ。

２着に、天宮こころ。終始厳しい中でなんとかテンパイを組んだのが、２着に繋がった。
グラディウスに迫られはしたが、天宮の意地の２着でなんとか耐えている。

トップに朝陽にいな。
２連投となって大活躍を収めた後も、朝陽の姿勢にはなんの変わりもない。
いつものように牌譜検討で反省点を洗い出す。
全ては、次の戦いのために。

グラディウスは、この後の試合もプラスを重ね、セミファイナルを４位で迎えることができている。
絶望的とも思われた状況から、ここまで這い上がって来た。

残り２節。
グラディウスが狙うのは、誰もが予想しなかった、大逆転優勝。
その悲願のために。

誰よりも神域リーグに出たかった少女は今。

――誰よりも神域リーグを楽しみ、眩しい太陽のような笑顔で麻雀を打っている。