「リーチ」
カン待ちリーチは、最も打点に寄った一打。ツモれば満貫、優に親かぶりをさせて大きく突き放すことができる。
ここを勝負どころと見たベルセルクは、太刀を大上段に振りかぶった。
リーチの一発目、優はノータイムでを打ち抜いた。河が強くヒントがない、オリきれないなら真っすぐ。それにしたって、恐れを全く知らないかのように切る姿は、まさに彼の二つ名「戦闘民族」にふさわしい。
石井だって黙ってはいられない。役なしテンパイから変化を待っていたが、高宮のリーチに対してツモ切りで追っかける。
2軒リーチに対しても、優は静かに危険牌を切っていく。3人のアガリ牌は、石井が3、優が2、高宮が1。全員に勝ちがある、切るか、切られるかの対決を制したのは、
最も枚数の少ない高宮だった。強引さで強引グを、戦闘意識で戦闘民族を退ける、あまりに強烈な一撃。
この日の高宮は、力強さと共に機敏さ、柔軟性も兼ね備えていた。
アガれば勝ちの南4局2本場、リャンメンリャンメンのピンフ1シャンテンからをリャンメンでチー、出来メンツのを払ってタンヤオに向かう。シャンテン数の変わらない鳴きだが、このほうが仕掛けを使える分、やれることが多い。
石井からをチーしてテンパイし、
最後は自力で決着。その瞬間、麻雀最強戦2023ファイナル、最後の16人目が決まった。
内田、石井にとって、決勝はやれることが少ない、非常に厳しい戦いとなってしまった。だが、それによって2人が最強戦で残した足跡・インパクトが薄れることはない。
内田は「投票してくれる人と喜びたかった、また次回リベンジしたい」、石井は「最強位になるという新しい夢が生まれた」と語る。次こそは結果を。その姿を応援してくれる人は、この1年で飛躍的に増えたはずだ。
高宮と最後まで激闘を繰り広げた優は、敗れてなお笑顔だった。もちろん、悔しくないはずがない。だが、本人が「やりきったので納得している」と振り返るように、この日の優の戦いは、鈴木優らしさが詰まった、ファンが期待する鈴木優の姿だったと思う。
そして、優勝した高宮。自分なりに戦い抜いたという彼女に、もしかしたら驚きを感じた人もいたかもしれない。超高打点で粉砕するだけでなく、巧みなステップで相手を封じる華麗さも持ち合わせた、新しいベルセルクの姿がそこにあった。リベンジャーとして、初めて立つファイナルの舞台でどのような麻雀を見せてくれるのか、今から楽しみでならない。
高宮プロ、おめでとうございます!
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。