瑞原が放った眩い光
文・小林正和【金曜臨時ライター】2024年1月26日
ここ最近は定期的に集まってカードゲームをしている。
村人の振りをした狼を見つけ出す“人狼”や、見えない数字を予想する“コヨーテ”(※狼に近縁のイヌ科イヌ属の動物を意味する。)という心理対戦型ゲームなどがお気に入り。
その中で、特にハマっているのが“テキサスホールデム”。
いわゆる“ポーカー”と呼ばれるものだ。
プレイヤーに配られた2枚のカードとコミュニティ・カードと呼ばれる共通の5枚計7枚のカードを組み合わせて、より高い手役を作って勝敗を競うもの。
今更(いまさら)感は否めないが、シンプルで世界的にも大人気であるこのゲームは、どこか麻雀と通じる要素がある。
本日の第一試合は、その様相が少し見え隠れした内容となった。
第1試合
東家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
南家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
西家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
この試合、画面越しながらも並ならぬ勝利への気迫が伝わってきた選手がいた。
燃えたぎるような赤のユニホームに、アシンメトリーの効いた緑色のヘアーが際立った姿で登場。
それもそう。
赤と緑は色相環と呼ばれる色を体系化したものにおいて、補色と呼ばれる位置に属し、お互いの色を引き立てる効果があるのだ。
“繊細なる超巨砲”というキャッチフレーズに肖って緻密な計算を入れてきた!?どうかは定かではないが、今シーズン… というより麻雀人生において一番苦しいかもしれないと語った事もあった松ヶ瀬。
現状、個人スコア36人中36位の位置に甘んじる中でこの試合に懸ける思いを見せる。
東1局
まだ一段目ながらも2副露してテンパイ。親番としては、幸先良く先手を取った形である。
ただ心もとないのはドラの待ちという点だろう。
一手代わりトイトイのルートはあるものの、このルールにおいてドラなし・赤なし・待ち悪しは手牌価値をガクッと下げる。
親とスピードという二つの武器で突き進む中、持ってきたのは
本日のヘアカラーに何処となく似ている
ポンしている牌、つまりカン材である。
さて、どうするか。
これを間髪入れる事なく松ヶ瀬は
「カンッ!」
と発した。
先手という有利な立場、ポーカーに例えるなら今は“レイトポジション”である。
符ハネや新ドラによる打点向上に加えて、ツモ回数を人よりも1枚多くツモる事ができるのだ。
もちろん相手に恩恵が転んだり、攻め込まれるリスクもあるが、ここはカンという場にインフレを巻き起こす選択。いわゆるチップ額を引き上げる“レイズ”と言って良いだろう。
目の前に積まれた新ドラ表示牌をめくりに手を伸ばす松ヶ瀬。
画像では分かりにくいのだが、その手は小刻みに震えていたので皆さんにもそのシーンを確認して頂きたい。
もしかして緊張しているのだろうか…
いや違う。
セミファイナル進出に黄色信号が灯つつあるチームに、そして自身にトップを届けたい。
“リアル武者震い”
私にはそんな風に映っていた。
そして、牌も松ヶ瀬という大きな引力に負けて引き寄せられて行くのは自然の道理。
ツモ・・ドラ
1,600オール。
点数はそこまで高くはないが、意志のこもったアガリは松ヶ瀬の背中を押して行く。
しかし、その後は今シーズンを物語るかのように二の矢がなかなか放てない。
というより放させてくれない存在が松ヶ瀬の前に立ち塞がっていたのである。