3万半荘から導き出した
70秒間の思考
文・小林正和【金曜担当ライター】2024年3月8日
別れや出会い。
そんな早春を迎える頃、東京は季節外れの雪が降っていた。
あの名曲がピッタリだなと呑気に朝を迎えたが、こちらはそうもいかない。
本日の第一試合目を終えた時点での順位表である。
新加入により初の9チーム編成とはなったとは言え、まるで今日の外の光景を写し出す風変わりなランキング。
二極化した縦長の展開はもちろん、目を見張るのは6位争奪戦と言えよう。
残り10試合という終盤戦の中で、僅か100ポイント差内に4チームが雪だるま状態。
あと一枚しかない“セミファイナル行き”の切符を手に入れる為に、ひしめき合っているから無理もない。
そして今後、特に厳しい状況が予想されるチームが存在していた。
下のレギュラーシーズンラスト3戦の組み合わせカードを見て頂きたい。
皆さんはお気づきになっただろうか。
実は、4チームの中で先に最終戦を終えてしまうチームが潜んでいる。
それは…
7位のTEAM雷電だ。
システム上、どうしても有利・不利は付きもの。
つまり、残り3チームは少なくとも一つの確定ポイントを見据えながら戦えるという訳だ。熾烈な争いにおいて、その利点はある意味大きい。
逆に返すと、雷電はリードを築いて他のチームにある程度の条件を課したい立場でもある。
第1試合目で悔しい4着となった黒沢の想いも託された萩原。
入場の際では自身の胸に手を強く押し当て、チーム・サポーターの士気も鼓舞する。
しかし、この試合も苦しい選択が待ち受けていた。
南4局
4着目ながらピンフ・ドラ2のテンパイ。
それも7巡目からヤミテン4巡が経過したシーンである。
しかし、ラス抜けするには倍満ツモか太・高宮から跳満出アガリが必要。
更に追い討ちをかけるのが、8位に位置するEX風林火山がトップ目と言う状況だ。
仮にこのままで終わった場合、素点と順位点だけで100ポイント以上のリードを与えてしまう…
静かに下に目線を傾ける萩原。
だが、辛い表情は萩原だけではなかった。
高宮も。
松ヶ瀬も。
そして
ネット麻雀業界では圧倒的な実績を残し、鳴り物入りでプロの世界へ。3万半荘を超える打数と筋カウントなどのシステム化された思考により、あっという間に人気と信頼を勝ち取った渡辺太。
その太が珍しく口元に手を添える。
時間にしておよそ70秒間の沈黙が流れるのであった。
第2試合
東家:萩原聖人(TEAM RAIDEN / 雷電)
南家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
西家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
この半荘は各選手の個性が多く光ったので紹介したいと思う。
東1局
まずは萩原。
幸先良く親番で先制リーチが打てる局面。
を切れば高めタンヤオ・赤2の待ちと、打点・待ち共に十分である。