譲り受けたのは
三人分の”チャンス”
……戦闘民族は
MVPへの道を突き進む
文・渡邉浩史郎【木曜臨時ライター】2024年3月28日
第1試合
東家:醍醐大(セガサミーフェニックス)
南家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
西家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
北家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
レギュラーシーズン終盤の観戦記は、どうしてもボーダーチームか個人賞獲得候補の選手に話が集まりやすくなる。
直接対決の構図が分かりやすく、書きやすい上に読者も気になるところというのが大きいだろう。
今回も御多聞に漏れずMVP争いの話になってくるのだが、今年は一点毛色が違う。
とりあえず始まる前の個人ポイントを一度確認しよう。
ドン、と青が目立つこの表を見てもわかる通り、同一チーム三人がMVP争いを競っている状況なのだ。
パイレーツは今日の二試合をもってレギュラーシーズン終了。
この二戦で実質的に、誰をMVP候補として擁立するかを選択しなければならない。
初戦のオーダーは……
戦闘民族、鈴木優だった。
「MVPチャレンジの機会をもらった」と本人がXでポストしたように、ある種チームメイトからの挑戦状でもある。
仮に小林が少しでもプラス復帰を目指したいと言ったなら、あるいは万が一、いや億が一瑞原が嫌がれば、「小林の連闘」といったオーダーも十分あり得た。
瑞原はかつて沢崎と繰り広げたMVP争いも頭によぎっただろう。あそこでもひと悶着あったが、結果として自身にとってもMリーグ全体にとっても最高の”熱狂”を届けることができた。
小林のプラス復帰の”チャンス”と瑞原のチーム内MVP確定の”チャンス”。この二つを喰っての初戦登場。
この一戦目を連対で終われば、パイレーツとしては異例の連闘策となる事は明白だろう。
しかし優の立ち上がりは芳しくなかった。
音速の東場が終わり、迎えた【南1局】は捲り合いで寿人に放銃。トップと16000点近く離れたラス目となる。
このまま終われば二戦目の出場は絶望的。
「やれんのか、優!」
仲林の大きな声が聞こえてきそうだ。
優の「機会をもらった」ポストは当然瑞原や小林からだけという意味ではない。MVPを獲得できる立ち位置にいた仲林も含まれている。
控室で応援している仲林にだってほんのり悔しさがあるだろう。
「優のほうが20pt程上だから、これは優が勝ち取った正当なチャンスだ」
仲林本人はそう割り切っているかもしれない。
しかし受け取る側の優はそれで割り切れるだろうか。
そう割り切るにはいささか彼は優しすぎるように見えてならない。
なればこそ、今ここでトップを取ることこそがチーム全員への恩返し。
【南2局】、柔らかく、かつ打点も見据えたこの対子落としから……
ここで安全度に大きく舵を切る打。
寿人の先制リーチに危険牌を打ち出すことなく……
この追いかけリーチに辿り着く!!
ただの直線的な打ち手では辿り着けなかったかもしれない……
海底を噛み締めるハネマンのアガリでいきなりラスからトップに!
続く【南3局】も後手押し返しの手組から……
醍醐の先制リーチにこのダマ12000で追いつく。
リーチの現物ではないが、トップ目であり河底牌が危険なら降りもあること、ドラか海底で自模れば跳満あることを理由にダマテンに構える。