仕掛け屋・本田朋広が
鳴かずに選び抜いた
勝利への道筋
文・東川亮【火曜担当ライター】2025年4月15日

今シーズン、TEAM雷電はチーム史上初めてレギュラーシーズンをプラスポイントで終え、セミファイナルも有利な位置につけて戦いを進めている。

チームとして好成績を残すなかで、原動力となったのはやはり、本田朋広だろう。ポイントリーダーこそ瀬戸熊直樹に譲ったものの、チーム最多の8勝。そして何より、チームの中で頭一つ抜けた31戦という出場試合数が、彼に対するチームの信頼を物語っている。
他の選手と違い、多様な仕掛けを駆使して戦う本田の麻雀も、また面白い。

チームの浮沈が懸かるセミファイナル中盤戦、この試合でも本田は自らの麻雀を貫いた。

第1試合
東家:本田朋広(TEAM RAIDEN / 雷電)
南家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
西家:醍醐大(セガサミーフェニックス)
北家:小林剛(U-NEXT Pirates)

この試合、本田は開局から2局連続で放銃し、7500点を失った。
しかし迎えた東3局は、配牌でドラ雀頭、リャンメン2つの1シャンテン。

これがすんなりとテンパイしてくれるのはありがたい。もちろんリーチ。

手が進んでテンパイした小林からが打たれると、裏ドラは表ドラと同じ
。
リーチドラドラ赤裏裏の12000で、失った点数を1.5倍以上にして取り返した。

これはいわゆる「誰でもこうなる」という局だが、逆に「本田しかこうはならんやろ」という選択があったのが、東4局1本場。
小林の手が進んで選択となり、打点を作る材料として残していたをリリース。

これを本田がチーしたのだが、残った彼の手を見ていただきたい。
中盤にして鳴いた箇所以外にメンツがないのもそうだが、手にはが残っている。
つまり、とメンツになっているところから
をチーした、いわゆる「出来メンツチー」。
「形は悪いけど打点はあるので、鳴いて少しでもプレッシャーになれば。時間ができてアガリまでいければ大きいし、守備の材料もある」
とは試合後の弁だが、そういう発想を常に持って麻雀をしているのが面白い。常人では思いつきもしないし、思ってもやらない打ち手が大半だろう。

この局は小林のリーチでアガリを断念することになるのだが、本田らしい自由な鳴きが出た一局だった。

そんな彼と対照的に、渋谷ABEMASの多井隆晴は打牌の選択肢が狭まっている。

東4局2本場。
多井にもダブルリーチチャンスの手が入った。即テンパイとはならずとも、

すぐに自風のをポン。ドラの
を切ればテンパイだが、

多井はを切った。持ち点的にはここで安くアガってもまだ3着目のまま、チームとしてはトップがほぼ必須という状況。時間もあり、どうせ局を進めるなら高くアガろうと、ドラの
を使っての最終形を探る。

その後もドラ切りテンパイを拒否しつつ、時間はかかったが単騎のテンパイにたどり着くが、

ラスト1枚のは醍醐の形式テンパイになる鳴きで流れて流局した。普段であれば、特に多井であれば軽くアガって局を進めてもよし、という考えもあったかもしれないが、トップ取りを考えての大きなリターンを狙った選択。多井に限らず、ABEMASには今後もこうした選択が増えるだろう。

オーラスを迎え、本田と醍醐はアガリトップの状況。この局の各者の選択が興味深かった。

小林の手は赤ドラあって2メンツ、トイツのを鳴けばすぐにアガれそうだが、現状では1人離れたラス目であり、できればリーチ・ツモで満貫にしたい手である。
を鳴くかどうかは、プレーヤー解説として招かれたKADOKAWAサクラナイツの堀慎吾・渋川難波でも意見が割れた。
