大荒れの半荘、
光る園田の
マジックナンバー
文・渡邉浩史郎【火曜臨時ライター】2025年5月6日

第1試合
東家:醍醐大(セガサミーフェニックス)
南家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
西家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
北家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
「マジックナンバー」と聞くと、一般的には野球の”マジック”、何勝すれば優勝するかの数字のことを思い浮かべる人が多いだろうか。
実はこの言葉はプログラム関係でも使われており、意味はそのまま”魔法の数字”。
具体的には
”製作段階では意図して書かれた数字だが、他者から見るとその意図はくみ取れず、ただ存在することで魔法のようにプログラムが機能する数字”
のことを意味する。
かいつまんで言えば”本人にしかわからない、他者から見れば意味不明だがうまく機能するために必要な何か”だ。

本日一戦目、グラフを見てもらえばわかる通り荒れに荒れた半荘であった。
南場以降のグラフのごちゃつき方がトップ争いの苛烈さを物語っている。
長丁場ではあるが、ぜひとも全て見返してほしいくらい内容の詰まった半荘であったが……

中でも輝いて見えたのが、この男。卓上の魔術師:園田賢だ。
園田にしかわからない意図の詰まった、まさに”マジックナンバー”が生み出す打牌。その至極の二局を見ていこう。
【東3局1本場】

まずは優がリードして迎えた東場の親番。園田の手は456の三色が見える、ターツの足りている赤内蔵の勝負手。ここはまっすぐ手を進めたいところである。

両面部分こそ埋まらなかったが、6巡目でこの形。
ここはの対子を払っていき、
対子を残すことでドラ周りを引いた時の受け入れを最大にするのが攻撃的かつ親番らしい打ち方ではある。
なんにせよ、受け入れ的にはか
、どちらかの対子を払っていくのが標準である。
当然園田もその選択になるかと思われたが……

園田は小考の末、打。
……?
両面も壊して三色も見切る! プログラム的にはまるでバグったような出力がされた!
しかしこれこそが園田の中の”マジックナンバー”が機能した、正解を導き出す一打。その数字の秘密に迫っていこう。

まずは他家の速度読みから。今回明確に早そうなのは二人、黒沢と醍醐だ。
黒沢は第一打Wから、
や
といったターツを作るのに重要な3と7の牌が手出しされた後に安全牌候補っぽい
の手出し。
醍醐は内側から払うターツ落としで、ターツオーバーかつ良形ターツを作りに行っていないことが伺える。
一方の園田の手は両面三つとはいえ、が二枚切られてドラ表示牌が
の
が他家に使われていそう。両面と言いつつ既にこのブロックは1~2枚くらいしか山にいなさそうと考えた。またピンズの場況が高いのも、
ターツにふんわり自信を持てない要因である。
ここまでのことから、園田は自身が両面三つとはいえ薄そう+仕掛けにくい手牌では二人に追いついていないと考えたのだ。

そしてここからが園田流。追いついていないなら、追いつけるようにすればいい。この手でそれが叶うのが……
対子手だ。場協が良さそうなやソウズが重なれば、仕掛けることも可能になる。そのためには今この手で一番重なりにくそうな、ピンズを他家に先切りの形で処理していく。
実際黒沢はイーシャンテン、醍醐は役牌ポンが効くリャンシャンテン。速度読みは正しく、
そしては他家に満遍なくもたれていて山に二枚。薄いところではあったのだが……

それでも、引くときは引いてくるのが麻雀。瞬間は裏目に見えるだろう。
凡人なら三色イーシャンテンの両面両面が、生牌同士とはいえと
のシャンポン残りに。

それでも園田は冷静に。薄いを引いたことを理解しているので、4556の中膨れの形は
もうが引けないと考えて
を先打ち。この能力があるからこそ……
