切り結ぶ太刀の下こそ…〜滝沢和典に見た剣術の極意【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/17 第1試合(麻雀チャンネル)】担当記者 千嶋辰治

一発目こそスジの【8ソウ】を切れたが、太の現物を抜くとアガリは遥かに遠のいてしまう。

しかし、次巡。

【4ピン】を引いてくると、迷うことなくドラの【白】を切った!

ノータイムでドラを勝負した理由について、

「前進するツモが来たら、挑戦してみようかな、と」

とのことだった。

南1局ということで例え失点しても自信の親番を含めてまだ局数が残っていることもあるが、それにしてもノータイムで【白】を勝負された方はたまったものではない。

さらに、リーチの時点で5枚あった【4ピン】【7ピン】は日向がツモったこの【4ピン】にて売り切れ。

しかし、太はそれを知る由もない。

 

切り結ぶ太刀の下へ踏み込んだ滝沢。

その先はさらに修羅の道。

テンパイを入れたが、こちらのカン【3マン】もカラテン。

しかし、マンズに多彩な変化が見込めるため滝沢はヤミテンとする。

 

テンパイ後、リーチを打ってしまえば打ち手にできることはない。

アガリ牌がやってくるまで、どんな危険な牌でも強制的に切り続けるのみ。

実はある意味で楽なのだ。

しかし、ヤミテンで押し続けることにどれだけの精神力が必要か。

滝沢はこのまま出アガリしてもたったの2,600点。

親リーチの点数が何点かはわからないが、単に得失点のリスクを考えればとてもじゃないが釣り合わない。

現物を抜けば楽になるが、それは同時にアガリを放棄することにつながる。

手番が巡ってくるたびに、滝沢はその思いと戦い続けただろう。

 

そして、場面は最終盤。

テンパイ後、手替わりの機会が無かった滝沢だったが、最後のツモで【6マン】がやってきた。

(…太がピンズのテンパイであってくれれば、勝機はある)

滝沢、驚愕のツモ番無しリーチ!

狙うは太の最後のツモ番。

大上段へ刀を振り上げた太の懐へ、滝沢が抜き胴一閃。

【5マン】を一発で仕留めた滝沢。

終盤はもつれたがこのリードが大きな足がかりとなり、チーム3連勝を決めた。

対局直後の滝沢、視線は卓上に落としたまま。

寿人、そして高宮が故前原雄大に向けて例のポーズで哀悼の意を表したが、滝沢には滝沢の思いがあった。

 

「僕がそれをやるのは何か違うかな、と。安っぽくなるかもしれないから」

 

KONAMI麻雀格闘倶楽部の監督としてチームを牽引する滝沢。

チームのチャーターメンバーであった前原に対する敬意をこんな形で示したのは実に彼らしい。

 

シーズン序盤に追ったビハインドを跳ね返し、気がつけば上位争いへ。

監督、そして選手として辣腕を振るう滝沢。

チームの重責を担い、悲願のシャーレに向かって走り出す。

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