『打ち込み』と『伏せ』　堀慎吾の妙手が冴え渡る日【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 12/1 第1試合】担当記者 後藤哲冶

堀がこの形からを引いて切り。
一気通貫こそ消えるものの、くっつきテンパイのこの形ではやは切ることができない。
タンヤオピンフ形が色濃く見える形だ。

引きのカンタンヤオイーペーコーテンパイで即リーチへ。
満足する形ではなかったが、打点は十分。
これは強者に共通する話ではあるが、何を引いたらリーチするかを決めてあるからこそ、堀の決断は早い。

しかしこの局は、追いついた黒沢が待ちの追っかけリーチが実る。
が目に見えて無かったが、だけでも行く価値があると踏み切ったのが功を奏した。
ラス１のを見事掴みとって2000、4000の加点。

 

東4局

迎えた堀の親番。
４巡目に堀の手が止まる。

この手牌から堀が導き出したのは切り。
対子手だけは見切り、ピンズのホンイツと、や周りを引いた時のメンツ手を見る形。
悪い手牌の手組みも、当然一級品だ。

ピンズが伸びてをポンしてホンイツのイーシャンテン。

そしてを引き入れて、これでを切ればテンパイだが……。
ここで、堀が深い思考に沈んだ。
それは何故か。

対面竹内の仕掛けだ。
をポンして打としている竹内の仕掛けは、タンヤオらしからぬ河をしている。
を２打目に切っているし、ドラのもツモ切り。
更にを切った後にをポンして打としているということは、カンを受け入れとして残していたということに他ならない。
この時点でタンヤオらしくはない。

更に、この前巡の時点で、自身の目からが全て見えており、ピンズでタンヤオのシュンツを構成しにくい。
もツモ切りということはソーズブロックがそうあるようにも見えない。
つまりは、この竹内の仕掛けをほとんどの場合役牌バックだと堀は読み切っていた。
故に、このが切りにくい。

それでも、堀は熟考の後にこのを切った。
その理由を、堀は試合後のインタビューで、「日向さんのトーンが高かった」と語っている。

確かに、この時日向はこの形のイーシャンテン。
当然はポンしたいし、リーチもしたい形だった。
つまり、堀はこの時このを止めて竹内がアガれなくなった場合、自分もアガれない竹内もアガれないとなると。
勝負手の日向がリーチに来てしまう未来を見たのだ。
そしてもしそれを日向にツモられた場合、損をするのは現状３着目で、更に親番である堀自身。

だから、このドラを切っている竹内に1000の放銃なら、それはそれで良いと受け入れ、かなり危ないと分かっていながら打ち込んだのだ。

点数を申告され、「はい」と小さく返事をした堀。

余多もの思考の先にある、堀の放銃。
もしかしたら、このを打つ選手は多いかもしれない。
しかし結果は、同じ放銃であっても。
その過程に、これだけの思考が詰まっている。
それこそが堀の麻雀を見たいと思わせる、まさにプロの一打だ。

日向が２度のアガリでトップ目に立って迎えた南3局、堀はこのを引き入れて、チャンタ三色含みのイーシャンテンに。
が、なかなかここから手牌が進んでくれない。

全員の河が色濃くなってきた７巡目に日向からが切られるものの、当然スルー。
黒沢が放銃に回ったため３着目にはなっているが、この手をチャンタ三色の2000点にはしない。