熱論!Mリーグ【Thu】
どうせ滝沢なら…
ライバル達を狂わせた
“チョイ悪タッキー”
文・真中彰司【木曜担当ライター】2018年11月29日
東京都港区某所、午後19時15分。
火花散るMリーグスタジオの卓上に、滝沢和典の姿があった。
ここまで12半荘を戦い、リーチによるアガリは12回。
そのうち裏ドラはなんと0枚。ここまで裏が乗らないと逆に凄いとさえ感じる。
しかしもっと凄いのは、リーチに頼らない高打点の手組みと、5.59%という圧倒的な放銃率の低さによって3勝を挙げている点だ。
じっくりと機会をうかがって、決め手だけをキッチリ決める。そんな滝沢の麻雀が今宵も炸裂した。
この日の1戦目、東3局1本場から。
ここから基本に忠実に、愚形ターツのを外していく。
最後はを雀頭にしてストレートにリーチでぶつけ、茅森や石橋のリーチを掻い潜って2000-4000のアガリ。
出来る限り好形や高打点の手を作ってストレートに勝負し、手が整わない時は潔く降りる。これが「教科書」と呼ばれる滝沢の麻雀である。仕掛ける時も、高打点か相当な早アガリが期待できる場合がほとんどだ。
しかしそのスタイルには、「滝沢の仕掛けは高い」「滝沢のリーチは高い」という、「滝沢ブランド」とも言えるイメージが付いて回った。
「熱闘!Mリーグ」でもコメントしているが、基本に忠実すぎるが故に、相手に読まれやすい打ち筋だったのだろう。大スランプに陥った時期もあった。
しかし、Mリーグが始まってからの滝沢は、日に日に勝利への感覚を取り戻しているかのように見える。何が彼を変えたのか。
今までのイメージを貫き通すのか?それとも払拭してスタイルチェンジするのか?
その答えのほんの一部が、この対局に隠されていた。
【第1試合】
南3局1本場、滝沢はここからドラのをポン。
鳴けば8000点が確定するとはいえ、他のターツは整っていない状態だ。守備的な滝沢にしては非常に珍しい遠い仕掛け。
ここからの進行が非常に丁寧だった。
まずのターツをから切ることでタンヤオを演出。
自風のを少しでも鳴きやすくするための工夫だ。
そして形が整った頃合いでを切ってタンヤオに移行。
他家は「滝沢の仕掛け」というブランドイメージに縛られて引き気味になっているため、比較的安全にテンパイを取れる状況を作り出せた。
結果的にはテンパイ出来なかったが、他家を降ろせたため失点無しでこの局を終えた。
他家を威嚇して、あわよくばアガろうという「執念」の見える1局だった。
続いて南4局2本場、1鳴きのこの牌姿からなんとをチーして打。
これには驚いた視聴者も多いだろう。確かにアガれば2着確保できる場面だが、あの滝沢が単騎にしてまで喰いタンのテンパイを取ったのだ。
ここでも滝沢に着順確保への執念を感じた。
石橋の奮闘により、結果的にこの半荘は3着で終わったが、大胆なドラポンからのバック、2副露で必死の喰いタンテンパイなど、今までの滝沢とは明らかに違う攻撃性を感じる半荘となった。
その秘密を探るべく、第2試合に連投した滝沢の打牌を更に見ていこう。
【第2試合】
この試合は幸いにも、第1試合とほとんど変わらないメンツでの試合となった。
まずは東3局の親番。が薄いこともあって、無理に一盃口を狙わずにと落とし、高目三色の満貫確定リーチ。
このリーチは従来の滝沢のリーチであろう。いわゆるストレートだ。
先にテンパイしていた松本から一発でが出て、12000点の加点に成功した。
そして、親が落ちた直後、あわや小四喜というトイトイで更に8000点の加点。
そして順調に局を消化して迎えた南4局2本場。
とをポンして、現状は南・赤2の3900点のテンパイ。
ここの滝沢の切りが実に趣深い。
待ち牌のは石橋の現物なので、魚谷に差し込んでもらえる可能性がある。
しかし魚谷は3900以上放銃するとラスに落ちてしまうため、赤やドラが固まっている手に打つわけにはいかない。
そこで1打目にドラのを切り、更にを切ることで、魚谷に「私は南・赤1の2000点のテンパイです」と宣言して、差し込みを誘導しているのだ。
この妙手により滝沢のトップは安泰かと思われたが、惜しむらくは魚谷がを持っていなかったことだ。