東1局は宮本がアガりを決めるが、その後は4局連続流局。
みんなただベタオリをしているわけではなく、自分が危険だと思った牌をきちんと止め、流局しそうだと思ったら鳴きで形式テンパイを入れてテンパイ料をもらいに行く。ネットで麻雀対局が見ることが普通の世代。見る目が肥えれば、腕も上がる。
その流局の中でも伊藤と佐藤が確実にテンパイまで持っていき、ゲームを引っ張っていく。こういう展開の時は、チャンス手が入った時に一発大きなパンチを決められるかどうかが、勝負の分かれ目になる。
その分かれ目となったのが南3局。
宮本がテンパイを入れるが、ダマのままを切る。
それを島村がチーをし、カン待ちのテンパイ。次巡、宮本が待ちのリーチを入れる。島村の手牌は7枚。そこにアタリ牌のを持ってくる。
危ないのは分かっているがラス目ということもありを切り、
12000点の放銃となる。
トップが飛び抜け2着争いとなる。
オーラス南4局。3着目の伊藤は3役が必要だが、ダブを鳴く。予選突破にはもう1役必要だ。ここで彼女は力づくでドラのを持ってくる。
そしてそのままアガりきり、逆転2着となる。
予選B卓
戦うのは
3年の井町梨乃さん
1年の三澤瑠花(るか)さん
3年の長澤頼花(らいか)さん
2年の高山結理(ゆうり)さんだ。
井町さんは初出場。
高校女子オープンはずっと見ていて、自分も出場したかったが、出ることができなかった。部活があったからだ。部活は野球部マネージャー。選手を支える大変な役割だ。その部活も終わり、卒業後の進路も決まった。同級生の最後の試合を見届けた後、自分の最初で最後の大会に望む。
三澤さんは学校で麻雀をやっている。
放課後、教室で勝手にやっているわけではなく、先生公認という珍しいケースだ。学校の先生や友達に「全自動麻雀卓を取ってこい」といわれ、大会に望む。普段はカープ女子の彼女はどんな麻雀を見せてくれるのか。
長澤さんは前回大会準優勝。
同じ世代の子たちと真剣勝負をできるのは楽しいが、やるからにはやはり優勝したいだろう。特に彼女は自宅に自動麻雀卓があり、家族で麻雀をやっている。両親の期待も背負っている。家族の期待と自分の願いを叶えることができるか。
高山さんは、高校女子オープンを見ている人にはおなじみで、多くのファンを持っている。
高校1年の夏は涙の予選敗退。そして1年の冬に悲願の優勝を達成した。また小林剛プロのファンで、雀風も持っている物も“小林剛推し”である。今夏は欠場し、久々の大会。女性らしくなった彼女、雀風もどのような成長を遂げているのか。
開局早々、まず驚いたのが三澤が理牌せずに打っていることだ。
しかもメンチンである。瀬戸熊直樹プロが、雀荘で理牌せずメンチンをしている女性を見て、「この人だ」と思って結婚した、という話を聞いたことがあるが、まさにそれである。また最高位戦の平賀聡彦プロも普段理牌しないことで知られているが、女子高生が理牌せずのメンチンである。しかも九蓮宝燈まで見えるという、いきなりの展開だ。
しかし「ロボ少女」高山が高速麻雀で全8局中4局アガり、強い麻雀を見せてのトップ通過。
次に3局アガった三澤が2位通過となった。終局後のインタビューでも三澤さんは目立っていた。解説の多井隆晴プロの東1局鳴かなかったことへの質問に
「鳴いちゃうと相手に流れがいっちゃう」
と答える。
「流れ」の解釈はいろいろあるが、オカルト的な「流れ」は“ない”ということでほぼ決着し、議論の的になることはなかった。
しかしだ。この高校女子オープンで本家本流の「流れ論」が出てきたのが、とてもとても興味深い。自分が鳴くと、持ってくるはずの索子が他のところへ行ってしまう。結局は鳴かなくてもアガれず、トップも取れずで、父親に「鳴いておけば12000だったのに」とデジタルに言われる。でも彼女は「流れ論」で戦う。真っ直ぐに打つ。小細工はしない。形の美しさは求めない。この点でも平賀プロに似ているのかもしれない。
決勝卓は、
「行雲流水」三澤瑠花