直後、小林がツモったのは白鳥のアガリ牌、。滝沢が切ったのスジである。小林自身は満貫のリャンメンテンパイ。あっさりツモ切……
……らない。手を止め、卓上を見据えて思考を巡らせる。なぜだ。確かに4枚見えのの上であるは少し気持ちが悪い牌ではあるが、シャンポンかタンキにしか当たらない牌だ。
九で長考したのは滝沢の七対子に危ないと思ったので。
テンパイ料が大事な点差だったんで結局押したけどね。なお、滝沢の手牌は1対子でした。 pic.twitter.com/28LKw08aZP
— 小林剛 (@supatechi) October 10, 2019
※小林選手のツイートによると、滝沢選手のチートイツを警戒したそうです。
考えた末に、小林が選んだのはツモ切り。白鳥が5200は5800点を出アガリして、この局は決着した。ただ、この局には四者四様、それぞれの魅力が存分に詰まっていると思う。
小林のテンパイへ向かう鮮やかな手順、形や打点に甘えない守備意識。
園田の打点を追った意志のある選択と押し。
滝沢の勝負どころを感じる嗅覚や、リーチへと踏み切った胆力。
そしてそれらを制した白鳥の、臨機応変な対応と、冷静な判断。
どこにも安易な思考や選択が存在しない、ハイレベルかつ重厚な頭脳スポーツ。その魅力の一端が、この一局からは確かに感じられた。きっと、見ていた視聴者の方の多くが、同じ感想を持ったのではないだろうか。
白鳥は自身の親番を横移動で終えると、
アガリトップとなる最終局は
の形からを切らずに打、3メンチャンとなるをとらえ、園田の打をロン。最後まで抜け目なく戦い抜き、2019シーズン初トップを獲得した。
どうしても欲しかった初勝利をこの3人からもぎ取ったというのは、白鳥にとって、今シーズンを戦う上での大きな自信になっただろう。今年の白鳥は違う。そう思わせてくれるのに十分な内容、そして結果だった。
なお、今回の対局では白鳥を重点的に取り上げたのだが、他にも見どころのある局が多かった。
東4局1本場では、園田がホンイツやドラののトイツなどをにおわせるブラフのような仕掛けと打牌から、を暗刻にした後に滝沢からリーチ宣言牌のドラをタンキで討ち取った。
南3局では、タンヤオ高めイーペーコーのテンパイ・ツモ四暗刻イーシャンテンだった滝沢が、ドラ暗刻で役牌を鳴いていた小林の動向や形を見切ってツモ切りリーチ、結果は園田への3900放銃となったが、園田、滝沢共に判断の正確さが光っていた。
このような見応えのある闘牌が毎試合繰り広げられるMリーグ。キンマwebの「熱論!Mリーグ」では、今後も試合ごとに麻雀や各選手の魅力を伝える記事を更新していくので、チェックしていただけましたら幸いです。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。