不発の攻めダルマは最後までブレない!負けても折れない寿人スタイル【熱論!Mリーグ】担当記者:山﨑和也

熱論!Mリーグ【Mon】

不発の攻めダルマは

最後までブレない!負けても

折れない寿人スタイル

文・山﨑和也【月曜担当ライター】2019年10月28日

里見「教授って誰なんですか遠山編集長」

遠山「去年からМリーグを見ていて、麻雀のデータに詳しい方だよ。各選手の推しポイントも詳しいんだ」

里見「ずいぶん都合のいい人が社内にいるんですね」

勝又「こんちわ。なに、呼ばれた気がしたんだけど」

遠山「勝又教授、お待ちしていました!」

里見「ややこしい名前ですね……」

Мリーグがはじまってそろそろ1ヶ月が経とうとしている。この原稿を書いている10月28日現在で34戦。いろいろなことがあった。近藤プロの大三元、瀬戸熊プロの四暗刻少牌しても元気に勝ち続ける者がいれば、放牧?に出されてしまった者もいる。時々仰天するパフォーマンスもあって、筆者は本当に楽しませてもらっている。感謝感謝だ。これからもますます盛り上がっていくことだろう。

さて、34戦もするとだいたいの選手がトップをとってくる。これまで多くの選手がインタビューで笑顔を見せてきた。ただ、そうなると人間どうしても「まだトップを取っていない選手は」と気になるもの。いわゆる不調にあえぐ選手だ。今回はその中のひとり、KONAMI麻雀格闘倶楽部佐々木寿人プロを取り上げる。

「寿人」の愛称でおなじみ。プロもアマも皆こう呼んでいる気がする。Мリーグ初心者の方も「ひさと」と呼ぶと、少し観るランクが上がる気がしますよ。サッカーでいう「カズ」みたいな。本稿でも恐縮ながらその表記で通したいと思う。その寿人だが、

ここまで目立った活躍を残せていない。個人ランキングはまさかの27位。4局打って3着2回、4着2回。実は昨シーズンも寿人はこの時期マイナスに沈んでいた。だが、ちょうど今の時期、昨年10月26日の対戦で国士無双をアガったのをきっかけに、徐々に得点を戻していった。役満の再来まではいかずとも、この日に復活を期待したファンは多いことだろう。今回は1回戦の模様をお送りする。

東1局の配牌から。いきなりのチャンス手だ。皆様は何を切るだろうか。とりあえず、では寿人になれない。ここはノータイムで打とした。一直線に索子のホンイツに向かったのだ。

筒子を払い、を鳴いてあっという間にテンパイ。何でも寿人は「ホンイツコンサルタント」と呼ばれているとか。この局は親のABEMAS・白鳥にも期待できる手が入っていたのだが、その白鳥からを仕留め、2600のアガり。開始してからわずか2分ほどの出来事だった。

東2局。先ほど光の速さで親を流されてしまった白鳥だったが、打牌は元気そのもの。と鳴いていき、お返しとばかりにホンイツの格好に。上図は小四喜も見えるが、ここで打。夢を追ってもがくよりは、アガりやすいホンイツのほうが賢明か。

巡目が進み、1300-2600のツモアガり。寿人に「倍返しだ」と言わんばかりの見事な加点である。

東3局。寿人の親番だ。早々にを鳴いて、萬子のホンイツに向かう。

をツモって打はいりませんよと、ホンイツを強く意識した一打だ。寿人の麻雀は行くと決めたらとことん突き進むのが特長である。その雀風から「攻めダルマ」の異名をも持つ。見ていて気持ちのいい麻雀で、ファンも多い。

おそらくが出てもチーはしないだろうと解説の園田賢プロ。まさにその次巡にサクラナイツ岡田からが出るのだが、ここはチーをした。実況席は思わず「あらっ」。場合によってはチャンタも視野に入れているか。ともかく待ちのテンパイ。

またも寿人の前に立ちはだかったのは白鳥。は寿人の当たり牌だ。ここで打として放銃回避。寿人の欲しいは山になくなった。

パイレーツ石橋も参戦。カンを鳴き、遠い仕掛けで3人を揺さぶる。(寿人は揺さぶられていなそうだが)

このチーも面白い。手の内からを切っていて、さらにも切っており、相当チャンタに見える。実際はまだ打でテンパイではないのだが、こういった卓外の視聴者をも惑わせるような仕掛けが石橋の魅力だ。白鳥のバランスのよい打ち回しに、石橋の玄妙な鳴き。今シーズン好調のふたりが寿人に恐れず立ち向かう。

結果はリーチを入れた白鳥と寿人のふたりテンパイ。寿人としては助かった格好だ。苦しいペンチャン形が最後まで残っていた。

東3局1本場。寿人の手がまたも好形だ。第一打ではに迷わず手をかけた。ではない理由はなんだろうと考えていると、次の巡目になっている。

この局は岡田がじっくりと獲物を捕らえようとしていた。いかにもパンチ力のある手牌。この手でを切ればのシャンポン待ちだが、前巡にを切っている岡田としては、好形でリーチを打ちたいという思いがある。少考の末、打。園田プロも「萬子のからまで何引いても好形ですもんね」とうなずいた。

どんなテンパイ形になるだろうとワクワクしていたところに現れたのはタンヤオが消える上にノベタンが残るので、最悪級のテンパイだ。「これはきついっすね」と園田プロも苦笑い。岡田は打で、しぶしぶ待ちのリーチをかける。

このリーチは白鳥と石橋に効果があった。白鳥は浮いたを手にしたまま回ることになり、石橋もがネックとなった。というのも、を切ったあとにツモ切りを挟んでを切ってのリーチだったのがミソ。と切って切りリーチならば、「あー安全牌のを切ってリーチなんだな」と思えるが、を最後まで残していたということは、その周辺が関連しているのではないかと見えるのである。

例えばから切りリーチといったケースだ。

少し難しい記述になったが、寿人には関係のない話だった。終盤で単騎待ちのテンパイを入れ、待ちとなったところですかさずリーチ。攻めダルマの本領発揮だ。流局間近でもためらいなくリーチをかける姿は見ていて気持ちがいい。それで何度大きなアガりをものにしてきたことか。本局では実らず流局となったが、親番続行でエンジンがかかってきたように映る。

東3局2本場。まだまだ好調な寿人の配牌。打でイーシャンテン。2巡目で3面子は勝負あったかに見えた。しかし園田プロから「うわうわうわすごい!」の声が。

石橋の手だった。ドラのが重なっており、赤やらやらで、思わずにやけてしまう手牌である。が重なって対子が5組。ここで打が細かいながらも親の寿人に配慮した一打に見えた。寿人に対して索子が高く、ならば先に切っておこうと。

少し進んでここで打。徐々にまとまってきた石橋の手。ただ、上家の寿人の捨て牌にも注目していただきたい。テンパイ間近なこともあって濃いのである。この局は佐々木と石橋のふたりが異様な捨て牌となっていた。

先にテンパイを入れたのは石橋。白鳥から出た2枚目のを鳴いて打とした。これでという、高打点の待ちである。しかもは山に2枚。ただ、石橋といえば遠い仕掛けを多用するイメージもあって、園田プロは「石橋さんの仕掛けでポンテンなんてことがあるなんてね」と感慨深げ。

「本当にね」と寿人もうなずいたかはさておき、待望のリーチをかけた。の待ちなのだが、寿人の河を見ると不気味なことこの上ない。平和の形なのかも想像しづらいほどだ。これに石橋の押しもあって、白鳥と岡田は現物を切って受けに回る。特に岡田はをつかまされてギブアップとなってしまった。残るもう1枚のは山。

「ハク―!」と実況の小林未沙アナが絶叫。寿人がつかんでしまった。石橋がドラ3の8000点で大きな加点。一気にトップに立った。対して寿人は4着に。寿人を応援していた方は崩れ落ちたのではないか。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀戦術シリーズ 新刊情報/