もがき苦しむ内川、藤崎…マエストロと忍者が味わうMリーグの重みと忍耐【熱論！Mリーグ】担当記者：渡邉浩史郎

12巡目、丁寧な手順で最速のテンパイをいれ、リーチ。

ドラ１の両面リーチだ。これをアガれるとぐっとトップに近づく。

アガリは藤崎かそれとも多井かと思われたが、その同巡この男もイーシャンテンとなり追いつこうとしていた。

内川だ。リーチ・タンヤオ・平和・ドラの満貫が見えるイーシャンテン。

現在ラス目でこの手形であるならば、当然押しの一手だ。まずは多井の⇒の切り巡から、比較的押しやすいを切り飛ばす。

そして10巡目、最高のを引き入れて文句なしのテンパイ！

三面張の待ちになった事もあるが、多井に相当切り辛いが出なくなったのが大きい。

しかしここでも内川は一拍置いた。

苦渋に満ちたような表情、そして絞りだすような声で

「リーチ」

もちろん、この一手しかない。当然のリーチだ。しかし内川には心の準備が必要だったのだと思う。

間違いなくこのⅯリーグという大舞台で選手が感じるプレッシャーは相当だ。

人生がかかったリーチと言っても過言では無いだろう。内川にこの切りを一瞬ためらわせる何かが、Ⅿリーグにはあるのだ。

内川のそんな必死のリーチが、すぐに実った。

一発でを掴んだ多井の放銃。リーチ・一発・タンヤオ・平和・ドラ1、8000点だ。

展開だけ見れば麻雀ではよくある光景かもしれないが、この舞台だからこその並々ならぬ熱さを感じたように思う。

これにより、内川と多井がなんと23500点の同点で並ぶ。トップを僅差で競っていた多井の陥落は、藤崎からすれば嬉しい展開ではあるが、一方で2着以下全員がトップを狙いに行くしびれる勝負の様相を呈していた。

【南3局】

先ほど悔しい放銃に回った多井。この親番で加点したい所だが、手が悪い。

この形からをポン。ホンイツに向かう。

遠い仕掛けだが、親番と自身の多井ブランドを盾に他家に圧力をかける作戦だ。

この仕掛けに丁寧に対応していったのが、藤崎・内川の両名。

藤崎がターツをぶっ壊してまでソウズを先切りすると……

内川もを合わせる。

内川が押し気味にを切り出すと…

藤崎は内川に危険なドラを先処理。

トッププロならではの非常に繊細な攻防だ。

そして多井がツモ切ったを藤崎がチー。

切りでホンイツに向かう。

は内川への安全牌でもあり、魚谷が合わせていない事を考慮すると最低一枚は山にありそう。打点、守備力ともに優れた手組になるチーだ。

するとこのチーで

内川が望外とも言えるを引き入れる。

守備的に行くならドラ切りだが、チーのドラ単騎も捨てがたい。多井・藤崎の両方に危ないが強気にを切り出す。

これを藤崎がポンしてホンイツのイーシャンテン。

内川にとっては折り込み済みとも言えるポンの声。そして内川のこの選択が..….

ハマった。を引き入れて、一気通貫・赤のテンパイ。ペン待ち。

あとはリーチするかどうか。内川の選択は……

リーチだ。

思うにこれはリスペクトリーチだ。ダマテンの大きなメリットは出アガリ率を上げる事だが、⇒と切り出した自分のテンパイ気配に忍者藤崎が、最速最強の多井が、三冠王の魚谷が、気づかないはずがないのである。

出アガリ率の上昇が見込めない以上はこの勝負手、リーチと行くべきだろう。

そしてこの選択が……

またもやハマった。

なんとリーチをした事で一発目に掴んだを止めていた藤崎が続けてを引き入れ、を勝負する形になったのだ。