熱論!Mリーグ【Mon】
「ガラクタ」「ツモ番なし」
度肝を抜く高宮まりの
バイオレンスリーチ
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2019年11月18日
遠山「ふむふむ、今日藤井聡太七段が勝てば最年少タイトル挑戦……」
里見「ついに本性を表しましたね。そんなに将棋界ではすごいことなんですか」
遠山「そうだなあ、Mリーグの中で高校生が無双しているようなものだよ」
里見「そういうものですか」
遠山「この前羽生さんにも勝ったよ」
里見「それはすごい!!」
「誰も真似できない」という言葉に憧れる。どの世界であれ、プロにとって勲章のような言葉だと思う。麻雀は打ち手によって戦術が変わり、展開も大きく変わるゲームだ。ときにそのフレーズが見る者を魅了させ、叫喚させ、場を一気に熱狂の渦へ包み込む。
このMリーグにも、そんな選手がいる。
今回は1戦目をピックアップする。いきなり東4局4本場からスタート。
ここまでの主な流れとしては、東1局で風林火山・勝又が親の満貫を雷電・黒沢から、続く一本場でもドリブンズ・園田が黒沢から跳満でアガり、上と下の差が大きくついていた。黒沢は早くもつらい点数に。現在トップ目の園田は上図の配牌。とが重なって、ドラも2枚あってのチャンス手である。
早々にを鳴くと、打として筒子の染めに向かっていった。ならくっつきやすいが、広さよりも高さを求めている。
も鳴けた。そして安全牌のを切る(カンはせず)。もう8000点が透けて見えるではないか。まだ場にが切られていないので、大三元まで可能性がある。
点数がない親の黒沢は園田をケアしつつ、テンパイに向かっていく。
2着目の勝又もを引いて少々ブレーキ。大三元の可能性は少ないとはいえ、当たった場合が痛すぎる。ここで打とした。
を引いて、園田はとのシャンポン待ち。手にしたもノータイムで切っていく。誰の目から見てもテンパイ濃厚といえるだろう。
直後にを引いて黒沢がテンパイを入れるのだが、かを切らねばならない。勝負なら当然を切るところだが、園田に対して危なすぎる。
ひと息入れて打とした。目の前のテンパイを外してしまうが、それほど筒子は切れないのだ。にくっついてうまくいくかどうか。
巡目が進み、終盤。黒沢はどうしても筒子がネックとなってしまい、テンパイが入らない。こうしてこの局は園田のアガり、もしくは一人テンパイでの流局に思えた。
最終盤。をツモった園田が手の内からを切る。いわゆる「空切り」というテクニックで、手が進んだように見せることができる。もしくは待ちが変わったか。
筒子を引きまくっていた黒沢はここでギブアップ。途中はカンでテンパイし直す執念を見せたのだが、を引いて両手を上げた。テンパイは絶望的に。
おっとここまで触れていなかった。麻雀格闘倶楽部、高宮がここでテンパイ。黒沢の状況と同じく、筒子を切ればオーケーだ。だが、問題は自身のツモ番がないのである。そして筒子は当然危ない。解説のアベマズ・白鳥プロも「はワンチャンスとはいえ行きづらいですね」。
「えええええ!」
普段は冷静な実況小林アナが絶叫した。力強く放たれた。白鳥プロからも「うわー」と驚きの声が漏れた。
園田の手牌で筒子が余っていると読んだのだろうか、ともあれ凄まじい攻撃に筆者は度肝を抜かれた。ここでリーチを打つのは並大抵のことではない。
園田も思わず力が入る。手にしたのは。高宮には通っていない。微妙に嫌な牌だ。
「ツモ番ないでしょおおお」という心境だったに違いない。園田の手はさすがに止まった。万が一を避けるなら現物のに手がかかりそうだが、園田もここは力強い手つきでツモ切り。
それを見てすかさずポンをしたのが勝又。打で形式テンパイを取ることに成功。最後の最後まで機をうかがっていた。ただベタオリするのなら簡単だが、ここぞで復活できるようにオリていくのが強者である。高宮の影に隠れがちだが、これもファインプレーであった。
結果はなんと黒沢のみノーテンで三人テンパイとなった。「なんだこれは」と実況解説のふたり。しびれた。流局ではあったが、本当にしびれた。思わず興奮した。その立役者が高宮であったことは間違いない。
続いて南2局を取り上げたい。
南1局5本場では、黒沢が園田からドラ3のアガりで満貫を浴びせた。これで点差がやや縮まっている。親の高宮は上図のイーシャンテン。打で待ちの好形を固定させる。
しばらくツモ切りが続いていた高宮にテンパイが入った。しかし入ったのは。これだとカンチャン待ちになってしまう……と思っていると高宮はをつかんでおり、勢いよく振りかざしていた。
迷わずに即リーチを打てる人はなかなかいないだろう。代えてを切ってのダマテン(一盃口)、を切ってのリーチ(が筋になる)もあったところだ。
白鳥プロは「寿人さん直伝のカン狙いですね」とコメント。これが麻雀格闘倶楽部の麻雀なのか。ここまでリーチ率第1位の高宮。2位は同チームの佐々木寿人である。
これを見た三者
カンとはいえリーチはやはり強い。各選手が一斉に手牌を崩し、受けに回っている。だが、筆者は先程の東4局1本場を思い返していた。あのときはたまたまうまくいっただけではないか。柔軟に構えていればアガれていたのではないかと。
やはりそう都合よくはいかない。欲しかったは園田の手にいった。ほら、やっぱりガラクタリーチなんて……。それでも筆者の中に何か予感があった。まだは山に残っている。もしや。
最後の1枚だった。もはやのけぞるしかなかった。
そして裏が2枚乗って4000オール。ひっくり返った。このアガりで高宮は一気にトップに。これがリーチの魅力である。高宮の強気な姿勢が功を奏した。
時にはその見た目からは想像もつかないほどバイオレンスな一面を見せるギャップ。
南3局もまた面白かった。