形は作った。あとは力を込めて、ただ祈るようにツモるだけ。
「どうせ王牌だ」「まぁよくやったよ」というコメントも流れてくる。
それほど、この1局で三倍満以上を作ることは至難の業なのだ。
「俺は絶対に鳴かないし、後悔もしていない」
そう決めて、小四喜が見えてもをスルーするほど、門前にこだわってきた。
不器用と呼ばれながらも、己のスタイルを貫き続けてきた。
第14回日本オープン覇者・山口大和。
彼が
「俺は鳴かないからね」
と誓った何者かが、その牌を彼のツモ山に置いていた。
そのツモ牌は、雀士・大和の麻雀へ懸ける情熱のように、眩いほど真っ赤に燃えていた。
最強戦の歴史に残る、劇的な大逆転四暗刻。
大和がたった一撃の”波動砲”でトップに浮上し、予選通過を決めた。
4位は蛯原朗。序盤に6000オールで抜け出したが、二の矢が放てず。
プレミアトーナメント決勝の再戦となった大和に、本当の意味でやられてしまった。
ぜひ連盟のリーグ戦で再戦してもらいたいものである。
そして3位は佐月麻理子。
倍満ツモで大きくリードし、オーラスまでトップだった。
しかし、役満親被りでまさかの3着落ち。
この瞬間、多くの協会員が悲鳴を上げたことだろう。
それでも彼女は「役満賞の半分ちょうだい」と、気丈に振る舞った。
そして2位通過は松ヶ瀬隆弥。
序盤のビハインドを正確なリーチでコツコツ返し、安定感を見せつけた。
そして1位通過は、見事な四暗刻を決めた大和。
これほどの大逆転は、めったに見られるものではない。
最後は
「これが門前派の真骨頂です」
と胸を張った。
役満賞の贈呈を終えて、舞台は決勝へ。
ZERO・井出康平・大和・松ヶ瀬隆弥が来年の最強戦の切符を賭けて争う。