新春MVP決戦! 魚谷侑未、ミスを引きずらぬ決意の闘牌【Mリーグ2021観戦記1/3】担当記者:東川亮

新春MVP決戦!
魚谷侑未
ミスを引きずらぬ
決意の闘牌

文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年1月3日

みなさま、あけましておめでとうございます。
今年も大和証券Mリーグを楽しんでいただきたいですし、そのお供として、キンマweb観戦記をお読みくだされば幸いです。

2022年のMリーグは、年明けの3日からスタート。まだまだ年明け気分という方も多いと思われるが、麻雀ファンであれば、この顔ぶれで一気にMリーグのある日常が戻ってきたと感じる方が多いのではないだろうか。

2018シーズン、多井隆晴。2019シーズン、魚谷侑未。2020シーズン、佐々木寿人。過去3シーズンの個人MVPがそろった「MVP決戦」である。残る一人、堀慎吾だって、今シーズンのMVPを獲得してもおかしくない実力者。堀はこの対戦を「MVP前哨戦」と称したという。

選手入場時の語りは、この日のプレーヤー解説を務めたTEAM雷電萩原聖人が担当。アニメ「アカギ」のアカギ役でも知られるだけに、いつもと違う雰囲気の語りと共に、2022年のMリーグが始まった。

第1試合
東家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:堀慎吾KADOKAWAサクラナイツ
西家:多井隆晴渋谷ABEMAS
北家:魚谷侑未セガサミーフェニックス

東3局。魚谷はわずか4巡でリーチをかけた。待ちは【3ソウ】【6ソウ】のリャンメンにもとれたが、ここはあえて三色になるカン【6ソウ】待ち。待ちの数は半分になるが、打点はリーチのみなら1300、リーチ三色なら5200と、4倍の差がある。ここはアガリやすさよりもアガったときのリターンを見た。多井がすでに【3ソウ】を1枚切っており、単純枚数でも半減まではしていない。

一発目に裏目の【3ソウ】引き。ただ、これは覚悟の上。

形の良かった親番の多井がテンパイ。さすがに役なしシャンポンにはできず、ピンフにとって【6ソウ】が打ち出される。ダマテンにしたのは、ドラと赤があってそのままでも5800あること、魚谷の現物待ちになっていること、そして自身がトップ目であることが理由だろう。

裏ドラは乗らずとも5200の直撃で、魚谷がトップ目に立った。

その後、東4局に多井のハネ満ツモで逆転を許すも、南2局、役牌3つを仕掛けて寿人のリーチに押し切り、5200。多井に食らいついていく。

だが、南3局に痛恨のエラーをしてしまう。4枚目の【1マン】を引き入れて【4ソウ】【7ソウ】待ちテンパイ。

だが、魚谷は【3マン】を宣言牌としてしまい、ノーテンリーチに。この局は寿人の追っかけリーチが入るも流局となり、魚谷には卓の成績とは別に、-20ptのペナルティーが課せられることとなってしまった。

やり直しとなった南3局では、堀がリーチピンフツモ三色ドラの3000-6000をツモアガリ。これで堀がトップに浮上し、魚谷は3番手でオーラスを迎えることとなった。

人がやるゲームである以上、この手の失敗はどうしても起こり得るものだ。そして、失敗をしてしまったときはパニックになったり、いつまでも悔いたりするのも理解できる。しかし試合は続いていて、魚谷には親番が残されている。今やるべきことは反省ではなく、目の前の手牌をアガリに結びつけることだ。

6巡目、魚谷はドラの【2マン】をトイツで固定する【3マン】切り。三色の目もあるが不確定な上、おそらく1枚は出ていくことになる。それよりもドラを固めてのタンヤオなどで打点を作ろうという進行だ。そちらの方が仕掛けも使いやすい。

【赤5ピン】引きでドラドラ赤、満貫の種がそろった。

ドラを暗刻にして1シャンテン。満貫どころかハネ満まで見える形に。

そこへ、多井が【7ピン】をツモ切り。鳴けばテンパイだが、【1ソウ】【4ソウ】【1ソウ】ではアガれない片アガリの形になる。【4ピン】【7ピン】は堀が【7ピン】を仕掛けており、場に3枚目。アガリトップの堀がリャンメンチーで時間はあまりなさそうだが、【1ソウ】【4ソウ】はあまり場に見えておらず、難しい判断に思えた。

「チー」
ノータイム。魚谷は迷わなかった。

失敗を引きずって心が弱っていれば、決断を先延ばしにしていたかもしれない。しかし、ここで【7ピン】を見送ってアガリ逃しをしたとなれば、さらに後悔することになる。このチーは、魚谷が強い心を保って戦っていることを表しているかのように見えた。

その思いに、牌が応えた。道中で【赤5マン】まで引き入れてのタンヤオドラ3赤赤・6000オール。これで魚谷が一気にトップまで突き抜け、そのまま逃げ切って2022年の初戦を飾った。

試合後の魚谷はやはり、憔悴した様子ではあった。おそらく、メンタルが図太いタイプではないとは思う。しかしそれでも、試合が終わるまではしっかりと気持ちを保ち、最善を尽くしてトップを持ち帰る姿は、責任を果たして結果を出した、トッププロのものだった。試合後には深く反省し、原因を確認し、次戦にはさらなる責任感を持って対局に臨んでくれるだろう。個人的には、「珍しいものが見られた」くらいの感覚である。

魚谷のトップで終わった試合だったが、随所に印象的な選択を見せていたのが、2位に終わった堀だった。

4巡目にチートイツの1シャンテンだった堀は、5巡目にツモってきた【8マン】を残し、【1ソウ】を切った。自身が第1打に切っている牌だが、魚谷、寿人が早い巡目で【9マン】を切っていて、【8マン】がまだ残っていると読んだか。

【8マン】は多井にトイツで山にはなかったが、【3ソウ】を引いてテンパイし、打【8マン】でリーチ。手出し【8マン】がトイツ落としに見えればチートイツとは読まれにくくなる。【4マン】【5マン】が既に2枚ずつ切られていて、【3マン】の場況も良さそうで、実際にリーチ時には全て山に残っていた。この辺りの選択は面白い。

南4局1本場、堀は寿人の先制リーチに対してまわりながら、カン【3ピン】待ちテンパイにたどり着く。ツモればリーチツモタンヤオドラ赤赤で逆転のハネ満。

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