雪原の終わりは見えずとも
萩原聖人の戦いは続く
文・東川亮【代打ライター】2022年12月12日
12月も3分の1が過ぎ、筆者の住むさいたま市も、ひとたび家を出れば身を切るような冷たい風が吹くようになりました。もうすぐ年の瀬。出かける際には少しでも暖かくして、体調を崩さないようにしたいものです。
さて、今年はまだ目にしていないのですが、北国の方ではおそらく、雪が降り始めているところも多いのでしょう。雪と言えば12月12日、この人がMリーグの試合会場に帰ってきました。
「雪原の求道者」萩原聖人。
12月は初出場。ここまでは俳優業との兼ね合いもあって出場が少なかったのですが、演技とはまた違う、ヒリつくようなMリーグの戦いを求める気持ちは強かったはず。
初戦は2位。自分のため、チームのため、応援してくれるユニバースのため、萩原は連闘で、勝利のために戦います。
第2試合
東家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
南家:萩原聖人(TEAM雷電)
西家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
この日、萩原は実に7回ものリーチをかけます。その一回目が東2局、親番での待ちリーチ。二度受けをリャンメン待ちになる方から引き入れ、感触は良さそう。
優から出て2900。ここに裏ドラが1枚でも絡むとまた違うのでしょうが、まずは一つ、アガって連荘できたのは好材料です。
迎えた東2局1本場は、中盤で優と茅森の2人がリャンメン2つの1シャンテン、今にもリーチがかかりそうです。
しかし、先制テンパイは親の萩原でした。役なしのカン待ちで、ここはダマテンとします。カンから入った待ちならリーチしたかもしれませんが、役もドラもなく、相対的に他者がドラを持っている可能性が高い以上、リーチをかけても相手の足は止まらないかもしれません。人は押さえつけようとすると反発するもの。不満な手で鼻息荒く押し返してくる相手とは戦いたくないということでしょうか。
案の定、茅森からリーチがかかります。打点こそ安いのですが、待ちはしっかりリャンメンの待ち。
リーチをしないなら一発でつかんだ無スジオリることも考えられましたが、ここはプッシュ。しかし、だからといって追っかけリーチはしません。この手はピンズを引いての好形変化、あるいはマンズを引いてタンヤオがつくケースもあります。チームメートの瀬戸熊直樹を連想させるようなダマ押し。
次巡、そのままツモったをラッキーと取るか一発ツモを逃したととるかは人それぞれですが、アガリで相手のリーチをつぶして連荘できたのは紛れもない事実。少なくとも、結果はポジティブです。
こういう渋いアガリが快勝の呼び水となることはMリーグでもよく見られる展開なのですが、
次局も先制リーチは茅森。今度は待ち、赤が1枚あってタンヤオ高目ピンフと、打点も待ちもAクラスです。
萩原もいい手でした。中が暗刻で、引きテンパイ。直前にが2枚切られており、三色確定のカン待ちが打点も待ちも絶好ということで切りとなってしまい、
茅森に放銃、8000は8600。
さらに次局は親の内川が4000オール、萩原はラス目に後退してしまいます。
普通の人なら萎えてしまいそうな展開ですが、ここからが腕の見せ所。むしろ闘志に火がついたようにも見えます。
東3局1本場。
萩原は、一度はピンズから切ったを引き戻すと、今度は手の内に留め、マンズの四連形からを切りました。他者の捨て牌から、受けもそれほど悪くはないと読んだのでしょうか。ときには方針を変えるのも、麻雀では必要です。
、そして残したをズバリと引いてテンパイ、即リーチを打ちます。「パチーン!」という打牌の音の高さに、萩原の手応えが感じられます。
しかし、優が宣言牌のまたぎであるを、こちらはソフトに切りました。そっと置いても、一発目に打つ牌としては強烈。手の内はドラ3赤で、1シャンテンプッシュにも納得です。
その打牌はまるで、優しい上司の激詰めのよう。今でこそ非常に柔らかい雰囲気の優ですが、麻雀店経営時代はどんな感じだったのか、気になります。
も押すと、を暗刻にしてテンパイ、カン待ち。切りリーチとしたのは、中スジでの出やすさを狙ってのことでしょうか。
これが手詰まった内川から打ち出されると、2人からロンの声。
開かれたのは、優の手牌でした。リーチドラ3赤の8000は8300。