「優勢と勝利は
似て非なるもの…!」
萩原聖人の覚悟がチームを
新たなステージへ導く
文・江崎しんのすけ【月曜担当ライター】2023年3月13日
第1試合
東家:村上淳(赤坂ドリブンズ)
南家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)
西家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:萩原聖人(TEAM雷電)
セミファイナル進出を決める、最後の7日間が始まろうとしている。
セミファイナル進出ボーダーに位置しているのは雷電。その背中をフェニックス・ドリブンズが追う。
300pt以上を残り6戦で埋めるのは至難の業だが、決して不可能なことではなく、当然雷電もまだ油断できる状況ではない。
東1局、8巡目、萩原の手牌。
456の三色がくっきりと見える手牌。
ターツが6つあるので、どれかを捨てなければならない。
リャンメンは残すとして、候補はかか(ドラ)の3つ。
萩原の選択は…
を選択する。
ポイントとしては国士を狙っている渋川がいるので字牌が場に高く、反対にの場況が良い点。萩原はに照準を合わせる。
を切ってを鳴くルートを残す選択もあるが、打点を重視しリーチ・平和・三色・ドラ1の跳満ルートを逃さない形にする。
次巡、打点がアップするを引く。
萩原は安牌のを残さず、目一杯に構える。
の場況も良いため、暗刻になってのペンリーチも視野に入れた打ち方だ。
一見なんてことない手順のように思えるが、この残しに萩原の覚悟が込められている。
もう一度、場を見てみよう。
たしかにの場況はいいが、萩原の背中を追いかける村上・近藤どちらの現物でもないため、1人からリーチが入っただけでたちまち押しにくくなってしまう。
下位2チームはトップを狙ってくるのは勿論、萩原をマイナスに沈め理想的な着順の並びも狙ってくるはず。そしてそれは萩原にとって一番避けなければならない結果。
つまり、村上・近藤への放銃はなんとしても避けたい状況なのだ。
雷電はボーダーにいるとはいえ、下位2チームとくらべ圧倒的に優位な立場にいる。
そんな状況にも関わらず、萩原は自身がアガる可能性が一番高い選択を行う。
とある有名な麻雀漫画の中に、こんなセリフがあった。
「優勢と勝利は似て非なるもの…!」
そう、雷電はまだ優勢なだけであって決して勝利ではない。
であれば、安全圏に身を置くのはまだ早い。
ギリギリまで危険牌を抱えてまでもアガりを目指す姿勢には、萩原の勝負師としての覚悟が込められていた。
実際に、このは村上・近藤の両者に当たる可能性のある牌だった。
村上には
近藤には
どちらも満貫クラスの手のイーシャンテン。
誰にテンパイが入るかで戦況が大きく変わる。
覚悟を決めた萩原が、今回は牌の気まぐれに選ばれた。
狙っていたを引き入れ、を切ってリーチをかける。
この1枚の後先が非常に大きかった。
直後、近藤がを掴み萩原へ放銃する。