村上淳、
トッププロの存在証明
【A卓】担当記者:東川亮 2023年6月18日(日)
麻雀最強戦2023、骨肉の争い。
メンバーが発表される少し前に金本実行委員長から組み合わせを聞いたとき、思わず「マジッすか・・・」と口走った。Mリーグ・赤坂ドリブンズとEX風林火山はいずれも、2022-23シーズンで入れ替え規定に抵触する可能性があったチームであり、そこには意図が透けて見える。日程が決まった時点で先のことは分からなかっただろうが、現実として赤坂ドリブンズはレギュラーシーズンで敗退し、村上淳・丸山奏子の2人がチームを離れることになった。
紹介VTR内で鈴木たろうが「嫌らしい、めちゃくちゃやりにくい気がする」と言っていたのは、まさしく本心。一方で、チームに残る者と去る者の対決に思うところはあるにせよ、そういう因縁を好む人が少なからずいるのも事実。特に今回取り上げるA卓に関しては、他の大会とは一風変わった、奇妙な注目を集めていた印象がある。
そして、昨年の全日本プロ選手権覇者・大塚翼の存在も、奇妙さをより際立たせていた。本来園田賢がいた枠に収まったであろう彼は明らかに異物であるものの、かつてドリブンズのアカデミーに参加したことがあるという。一ファンだった男が同じ舞台に立ち、憧れの存在を倒す。そんなドラマ、最強戦を通じたサクセスストーリーがあったっていい。
それにしても、絵面には違和感が。なんだか不思議な対局が始まった。
開局からたろう、大塚と満貫をツモり、2人がやや点数を持って迎えた東4局。
大塚は役なしのテンパイを入れると、カン待ちで即リーチをかけた。引きテンパイは役もつかず待ちも悪くあまり歓迎したくないところだが、迷わずリーチに行ったところには、Mリーガー3名を相手に強く攻めようという大塚の姿勢が垣間見える。カンとカンの待ち選択は、シンプルに1枚切れ2枚切れの差だろう。
打点のない悪形のリーチでも、相手の形次第では守備に回らせて加点につなげることはできる。ただ、今回は親の村上がドラドラの好形1 シャンテンで、オリるような形ではなかった。
押しから、を暗刻にしての待ち追っかけリーチ。打点も待ちも、大塚よりはるかにいい手である。
山には残っており、もちろん大塚が勝つ可能性もあった。しかし、ドラまたぎのに村上の大きなロンの声がかかる。3巡前にツモ切ったを捉えるのは、さすがに難しい。
リーチイーペーコードラドラの12000。村上が親番で大きく加点してトップ目に浮上し、大塚がラス目に後退する。
村上の親番は2本場まで続いたが、丸山がたろうから5200は5800を出アガリして終了。村上、丸山、たろう、大塚の並びで試合は南場に進んだ。
南1局、親番の大塚はメンツ手とトイツ手のバランスをうまく取りながら牌を重ね、チートイツでテンパイを入れる。
ドラ待ちでツモればハネ満以上の打点が確定、ラス目から一気にトップ目まで浮上できる。少なくとも派手な捨て牌でまで切っている下家のたろうは持っていなさそうだ。
たろうの手は国士無双。しかも大塚のリーチが入った時点で1シャンテンだった。それでも状況次第ではオリもあり得そうだが・・・。
こうなれば話は別だ。国士無双テンパイ、待ち。山にはまだ、1枚だけ残っていた。
最後のは、丸山が引いた。
そして次巡、丸山の手が大塚のロン牌を引き入れて一歩前進。はが4枚河に見えていてノーチャンス。
だが、たろうの押しが見えている丸山は甘えない。冷静に現物を落としていく。
リーチの現物が尽きた最終手番でも、には手をかけなかった。丸山はこのとき、たろうの気配をハッキリと感じていたという。
もちろんそれは大塚も同様。最終手番で引いたを投げ捨てるかのように切ったが、声はかからず。
最後はたろうが無スジをつかんでオリ、大塚は一人テンパイで局をつないだ。
次局、大塚はカン待ちのテンパイで即リーチをかけた。
マンズやピンズで好形が作れそうな牌姿だが、下家のたろうがすでに仕掛けを入れている以上、親のリーチで主導権を握り返したい、といったところか。
たろうの強烈な押し返しを受けたものの、大塚はをツモアガリ。2000は2100オールのアガリで丸山とほぼ並びのところまで迫った。
今日の敗因ランキング1位これ
たろうさんの安全度とか鳴かれるかとか考えて、3ワンきったけど、
裏ドラ効率だろ。。。
結果、きったほうが裏ドラ載ってた。展開全然違った。
この状況でいったんリーチしないとかは
なかったのに、裏ドラ効率優先だろ。。 pic.twitter.com/Jjr7adXGsl— 大塚翼 日本プロ麻雀協会 (@moritsuba3) June 18, 2023
ただ、大塚が敗因として挙げていたのがこの局だった。
たしかに、裏ドラ効率を追って抽選を受けられる枚数を最大限に受けていれば、裏ドラが1枚乗って満貫となり、村上まで肉薄する大きな2番手まで浮上できていた。それは結果論なのかもしれないが、細かい可能性までをシビアに追わなくては、このクラスの相手には勝てないということなのかもしれない。
南2局では、たろうのリーチツモ裏3の4000オールが炸裂。
大塚にとっては、取り逃した6000点が最後まで響く形となってしまった。
一方で、村上はここまで静かに局を進め、点数を維持していた。
南1局1本場、大塚のカン待ちリーチの局では、1枚切れのを切ればピンフテンパイだったにもかかわらず、それすら取らないという徹底した守備意識を見せていた。