南3局、日向藍子
勝利の満貫ツモに至るまで
文・東川亮【火曜担当ライター】2024年12月10日
大和証券Mリーグ2024-25、12月10日の第2試合では、日向が持ち点5万点と大きなトップを獲得。初戦でハコ下に沈んだ多井のマイナスを取り返すことに成功した。
決定打となったのは南3局のリーチ一発ツモドラの満貫だったのだが、この局の4者が実に興味深かったので、今回の観戦記は1局に絞って取り上げさせていただきたい。
第1試合
北家:小林剛(U-NEXT Pirates)
■小林剛の奇妙な冒険
まずは状況を整理しておこう。トップ目は日向で、この局を流せばほぼトップ、少なくとも2着以上は堅いという状況。親番の菅原はラス目で、とにかく連荘必須である。
菅原の手牌。
悪い、悪すぎる。悪すぎて悩む。
連荘必須と言ったところにこれはもう、なんてこったい。
とは言え、ルール上何かを切らなければ始まらない。少考し、菅原はを切った。多めのマンズに寄せるかドラを使うか、8種から万が一の国士無双か。はいずれにも絡まない牌だ。
菅原にカメラが切り替わると同時に、「チー」の声が聞こえた。
チーなので、もちろん発声は下家の小林である。
ここから。
・・・こんなとこから?
鳴く前の小林の配牌はこう。
・・・悪い。
ドラリャンメンがあるとはいえ魅力はそれくらい、孤立の字牌5種の菅原と比べても遜色ないくらいに悪い。
こういう手のときはおとなしくしつつ、都合良くツモが効いたときだけアガりにいく、という打ち手が大半ではないだろうか。
この場面については、解説を務めた朝倉康心も対局舞台裏でもちろん聞いている。詳細は実際に動画を見ていただくとして、ひと言で表すと「チーしておいたほうがマシ」という鳴きだった。
とは言え、このチーをしそうな選手は、他にあまり思い浮かばず、小林らしさ全開の鳴きだったように思う。
小林は次巡の引きで、雀頭ができてチャンタが見える形になるもツモ切り。一色手のほうを色濃く見ていく。
1段目が終わる頃には、清一色まで見えるような形になっていた。意外と何とかなるものなんだなあと、感心もするし勉強にもなる。
その頃、菅原の手は国士無双がはっきり見える形に。のトイツも切って、いよいよオールorナッシングの様相を呈してきた。こうなると、小林の欲しい牌もあとひとつくらいは鳴けそうである。そしてもちろん、菅原の国士が成就することがあれば、戦局は一気に変わる。
■瑠美の選択、日向の決断
小林の手が1シャンテンまで育った頃、
日向が最初にテンパイした。役なしドラ1リャンメン待ち、通常時ならリーチの一手に思えるが、日向は少考し、
テンパイ打牌のを無言で、縦に置いた。このままではツモでしかアガれないが、現状トップ目で相手の押し返しもありそうな状況。ドラもそこまで見えていないということで、後に対応できる余地を残した。
さて、お気づきだろうか。日向の手にも小林の手にも赤はない。国士模様の菅原にとって赤はブレーキだし、早めに引いていればすぐに河へと放たれそう。そこにも見当たらないということは、山になければ
ここにある。ピンフ高目タンヤオ、ドラ1赤3。高目ハネ満、安くても満貫確定という大物手が瑠美に入っていた。巡目も深く、ここはダマテンとする。