選択の連鎖が導く解答とは
──表裏一体の攻防──
文・小林正和【金曜担当ライター】2025年1月17日
明日は大学入学共通テストの開催日であり、この観戦記が公開されている頃にはその日を迎えているだろう。
思い返せば私も数十年前に受験したが、当時は“センター試験”という違う名称で呼ばれていた。また2025年度からは“情報”という新科目が追加されたりと、現代社会の変遷を辿っている。
しかし、変わっていない点も存在していた。それは“マークシート”による解答方式。全国の受験生が、静まり返る試験会場に鉛筆の走る音を響かせ、一問一問に全力を注ぐ。
ここMリーグ・スタジオも、まるで試験前夜の若者達のように一打一打に己を懸け、正解のない選択肢を塗り潰していた。
第2試合
東家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
南家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
西家:瀬戸熊直樹(TEAM RAIDEN / 雷電)
北家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
まずは、こちらをご覧ください。
本日の第一試合が始まる前の順位表である。
続いて試合終了後がこちら。
二つを見比べて頂くと、大きく変化している箇所に気づくだろう。それはTEAM雷電とEX風林火山とのポイント差である。
開始前にあった336.3pが、たった1試合消化しただけで269.2pへ。つまり67.1pもの距離が縮まっているのだ。トップ・ラスを決められた訳でもない。2着・4着というありふれた着順…それだけでこのような動きを示すのである。
インタビューの際は明るい表情を見せる事の多い黒沢だったが、4着となってしまった時の本日のコメント・表情からは並ならぬ悔しさが滲み出ていた。
“2年連続セミファイナル進出を逃したチームは選手入れ替え対象”
その見えない悪魔染みた十字架を背負う数少ないチームであるTEAM雷電。(※他にBEAST Xが対象チーム)
レギュラーシーズン残り35試合中、8位の渋谷ABEMASとは12試合、7位のEX風林火山とは13試合もの直接対決を残している。
その内、今日の第一試合のような結果を後4回引くだけで並んでしまうのだ。トップラスに至ってはオカが加算されるので下手したら2回ほどで逆転されるかもしれない。
つまり見た目以上に両者の差は無いのである。
更に雷電にとってプレッシャーとなるのが試合日程によるディス・アドバンテージ。
こちらは最終週の組み合わせを示したもの。皆さんお分かりになっただろうか。
それは、現状下位に位置する3チームよりも一早く最終戦を迎えてしまう事である。
仮にセミファイナル進出ボーダーが接戦で突入した場合、先に通過ポイントを提示してしまう雷電はスケジュール的に不利な立場と言わざるを得ない。
そんな嵐の前の静けさに近い嫌な雰囲気が漂う中、黒沢の悔しさを背負い、本日2戦目に現れたのが
“卓上の暴君”
瀬戸熊直樹であった。
ルーティンである軽く頬を叩く仕草で登場し、チームメイト、サポーター、そして何より自分自身にライデンティティというチーム精神を叩き込む。
「黒沢が1戦目ラスだったんで。それも本人けっこう落ち込んでてね。僕がトップ取っても彼女の落ち込みが消える事は無いとは思うけど、次の試合までにリフレッシュできるようにチームポイントだけは戻しておこうと。」
試合後に秘めた想いを語った瀬戸熊。
その言葉通り、開局から攻め溢れる選択肢をマークしていた。
東1局
最初の分岐点は7巡目にを残し、安全牌であるを消費したシーン。
さえ先に動ければ誰よりも速くアガリをものにできるだろう。しかし、現状ではドラも赤牌もなく打点という観点から見ると少し物足りない印象である。
確かにブクブクに構える事で三暗刻という可能性は残るものの、が暗刻になった場合は、どの道待ちに取りそうな牌姿。そうあまり成立しない役を追うならば、この後のリーチなどに備えて押し返せるように先にを逃す打ち手も多い。
それでも取りこぼしの無いよう手の内に留めると
すぐに牌も応えるツモで先手リーチへと辿り着く。
瀬戸熊はこうした試合の序盤である“入り方”を大切にする打ち手であり、この一連のツモは感触良く映っただろう。
しかし、簡単にアガリまで許してくれないのがMリーグという舞台。
次巡、松ヶ瀬がを仕掛けてタンヤオの片アガリ待ちテンパイを取って追いついたのだった。