覚悟と執念の見逃し
渋川難波
セミファイナルに、食らいつけ
文・後藤哲冶【月曜担当ライター】2025年3月3日
Mリーグレギュラーシーズンは最終盤を迎えていた。
毎年、この季節はずっしりと重たい空間が対局場を支配しているような、そんな錯覚を受ける。

レギュラーシーズン通過争い。
下位チームは残り14戦で、上位6チームに入る必要がある。
今日はその苛烈を極めるボーダー争いに参加する4チームの戦い。
全てのチームが、負けられない戦いではあるのだが、その中で特に負けられないチームがあった。

KADOKAWAサクラナイツ。
現状ボーダーとの差は230ptほど。残り14戦の中でひとつでも多くトップが欲しい。
そんな状況下で、登板を任されたのは渋川難波。
1試合1試合確かに減っていく試合数。
残された時間は、そう多くは無い。

3月3日 第1試合
東家 渋川難波 (KADOKAWAサクラナイツ)
南家 萩原聖人 (TEAM 雷電)
西家 松本吉弘 (渋谷ABEMAS)
北家 佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘俱楽部)
東2局1本場

先制リーチは寿人から。
カンのリーチのみだが供託1本の1本場であること、手牌の変化があまり無いことを加味して迷いなくリーチへ。
どんな状況でも一定のリズムで打牌を繰り返す寿人だからこそ、リーチによって相手に与えるプレッシャーも大きい。

の対子落としで迂回していた渋川が、ドラの
を引いて追いついた。
手牌だけ見れば待ちでリーチと行きたいところだが、渋川がここで思案に沈む。

が3枚切れていて見た目枚数で
と
のシャンポンでは1枚しか差が無い。
そして寿人のリーチにはスジがかなり通っており、残り7スジ。
は自分で固めて持っているため、相手が持っていない可能性もあり、放銃率もそこそこあるが、
の方は
が通っているので
待ちが無く、
が3枚ずつ見えているため
待ちもダブルワンチャンス。

ということで、切りリーチでのシャンポン待ちを選択。
が3枚見えていることで
の待ちも悪くなかったのが選択を後押しした。
そしてこの選択が――

最高の形で返ってくる。
終盤でをツモアガリ、2000、4000の加点。

幸先の良いスタート。
しかし渋川の表情に喜色は見られない。
当然だ。まだまだ、先は長い。
東3局1本場

前局松本に聴牌打牌で放銃となってしまった渋川だったが、その攻め手を緩めることはない。
寿人から切られたをチーして、タンヤオのイーシャンテン。
トップ目であってもタンヤオで目一杯手を広げるのは渋川の良さだ。

先にテンパイを入れたのは親の松本だった。
を重ねてドラドラチートイツテンパイ。
アガれば9600の高打点だ。

しかしそうはさせまいと渋川も追い付いた。
カンのタンヤオドラ1。