鈴木たろうが繰り出す打点の鳴き 小林剛が魅せるスピードの鳴き 対極な戦法の2人が作り出した至高の一局【Mリーグ2021観戦記1/4】担当記者:江嵜晋之介

たろうが繰り出す打点の鳴き
小林が魅せるスピードの鳴き
対極な戦法の2人が
作り出した至高の一局

文・江嵜晋之介【火曜担当ライター】2022年11月4日

第2回戦
東家:二階堂亜樹(EX風林火山)
南家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
西家:小林剛(U-NEXTパイレーツ)
北家:萩原聖人(TEAM雷電)

Mリーグ2021シーズン新年2日目の2回戦目は上記4人での試合となった。

開始する直前に対局の見所を聞かれた解説の土田浩翔プロは、「門前派の2人と副露率が高い2人の対決」と回答。
今シーズンの4人のデータを見ると、確かに副露率には大きな差が出ている。

4人の中で一番高いのは小林で副露率33.53%(全体2位)で、一番低いのは萩原の12.03%(全体31位)。
単純な計算だが、小林は萩原の3倍弱鳴いていることになる。
たろうも小林には及ばないものの、副露率25.71%とMリーガーの中では鳴きが多い部類に属している。

ただ同じ鳴きが多い2人の選手だが、鳴き判断・鳴いた後の手牌進行は対極と言っていいほど大きく異なっている。

東2局

親番のたろう。【中】を一鳴きしてこの手牌。
ドラが【5ソウ】なので【中】ドラ1のテンパイだ。
たろうはここから打【4ソウ】のテンパイ取らずを選択する。

2,900点の両面テンパイを拒否し、【白】【中】ドラドラあるいは【中】ドラ3の満貫を狙う一手。

たろうは高打点(満貫以上)を強く狙う雀風だ。もちろん安手をアガることもあるが、満貫になるルートを想定し必要な箇所を鳴いていくいわば「最速の満貫を目指す鳴き」だ。

この局はたろうの判断が功を奏す。
すぐに【白】が出て満貫のテンパイに成功。先にテンパイを入れていた亜樹から【7ピン】が出て12,000点のアガりとなった。

そんなたろうに対して、小林の鳴きは性質が全く違う。

南2局2本場

小林はこの手牌から1枚目の白をポン。打赤5sとする。

自身がトップ目で2着目のたろうの親番。ここは親番を流したいが、点差が7,000点しかないためもう少し加点したいところ。
手牌も整っているため【白】はスルーして門前で進め、白は安牌候補として留めておくMリーガーが多いのではないだろうか。

小林はたろうと違い、打点ではなく速度に重きを置いて鳴くケースが多い。打点は多少犠牲にしても他家よりも早くアガることで他家の加点を許さない、いわば「他家のチャンスをつぶす鳴き」だ。

言うのは簡単だが、徹底して実践するのは並大抵のことではない。
一度判断を間違えれば、不利な捲り合いに持ち込まれ致命傷を負うことも大いにあり得るからだ。

今回の対局ではこの2人のデットヒートが繰り広げられたのだが、明暗を分けた南2局3本場を紹介したい。

4巡目、親番のたろうが【南】をポン。
前巡に【東】を引いて【9マン】を切っているが、これは役役トイトイあるいはドラの【4マン】を使った【南】ドラ赤を強く見たたろうらしい一打。
【7マン】の受け入れは無くなってしまうが、後に【8マン】のシャンポン待ちになった時の出やすさを狙っている。

【東】を重ねるかドラ【4マン】を引いてくる構想のため、【4ソウ】【6ソウ】は必要ない。【白】をポンしつつシャンテン数を進めない打【4ソウ】を選択する。

6巡目、たろう【6ピン】をツモ切り。
この【6ピン】に対して南家の小林が一瞬間を空けて、ポン。

このとき、小林には3つの選択肢があった。
1つはもちろん【6ピン】をスルーして門前で進めるパターン。
ただ、たろうの親番を流したい小林としては鳴いて手を進めたいところ。

そして残りの2パターンは「チー」するかそれとも「ポン」するか鳴き方の選択だ。
小林はポンを選択したが、どちらの選択にもメリットデメリットがある。
まずチーした場合は手牌に【6ピン】がアンコで残ることになる。

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