魚谷侑未・鈴木優の3局 師弟によるデッドヒートを制したのは【Mリーグ2022-23観戦記12/20】担当記者:ZERO/沖中祐也

1本場。
日向が肩で息をしている。

 

なんと、日向はここから【6ソウ】を切ったのだ。
下家の滝沢がピンズのホンイツっぽい捨て牌をしている。
まだテンパイしているとは思っていないが、ライバルに対しては鳴かれるだけでも損だ。

ここから打【4ソウ】チートイツのイーシャンテンになったが意地でもピンズは降ろさない。
さらに

【4ピン】をツモってテンパイ! ダマテンの800・1600ではトップまで100点届かないのでリーチを打つ手も十分に考えられる。
しかし日向は

ダマテンに構えた。(滝沢がこれをチー)
なんて我慢の利く選手だ。トップが目の前にぶら下がっていても慌てない。
それだけじゃなかった。

次巡、どうしようもない【4ピン】をツモってきた日向は、口を結びながら時間を使い、そしてそっと安全牌の【北】を抜いた。
未だ滝沢がテンパイとも思えないが、いかにも鳴かれそうな【4ピン】を切らないといけない上に自身がピンズ待ちでは勝算が薄い。

日向だってトップが欲しかったはずだ。
(私が無理しなくても最強のチームメイト3人がいる)
この我慢こそが、今季未だノーラスという記録を継続しABEMAS躍進を支えているといえるのかもしれない。

そして最後の1巡にドラマがあった。

魚谷の手番、テンパイしているもののツモってきた【西】は滝沢の危険牌。
滝沢はドラの【3ピン】を切っており、テンパイに見える。
オリるか… オリても優がノーテンならトップ維持、さらに優がテンパイでも優と滝沢の2人テンパイならギリギリトップ堅守となる。

長考に沈む魚谷。
私はてっきりオリると思っていた。
ここで危険をおかしてテンパイを取り次局以降凌ぐという二段階のハードルを超えるよりも、2人テンパイに賭けてオリたほうがトップ率は高いと見る。

しかし、魚谷は私の想像を遥かに超える選択を取った。

ツモ番なしリーチだ!
【2ソウ】【5ソウ】は滝沢も優も不要な牌であり、厳しい選択を迫ることができる。

そもそも魚谷に伏せるという選択肢はなかったようだ。
滝沢がノーテンで優の1人テンパイだというケースもあるし(実際にそうだった)回っているように見える日向がひょっこりテンパイしていることもある。
ほんのイレギュラーによって誰がテンパイかわかったものではない。そんな偶然にかけてトップを逃してしまうよりは、自分の手でトップを決める…そんな魚谷の意思を感じた。

「微妙だったかもしれません」
後に魚谷は語る。

厳しい選択を迫られるというが、魚谷がテンパイなら滝沢も優も安心してオリることができる。次局が確約される上、リーチ棒を出すことにより条件はかなり緩和されるからだ。

こうして師弟の2人テンパイで流局、もつれたオーラスはフィナーレを迎える。

届かなかった1牌

トップまであと少しという優の手牌。↓

優はここから打【9マン】
アガリトップならばイッツーよりタンヤオ。魚谷に教えた技術を実践していく。

待望の瞬間がやってきた。

絶好のカン【7ソウ】をツモってテンパイ! 落ち着いて【3ピン】を切っていく。

絶好の【2ピン】【5ピン】テンパイである。

念願の勝利までもうあと1牌。
今日はどうしても勝ちたかったと何度も語る優。
チームメイトのため、企業のため、ファンのため… もはや自分のためだけに打っていたあの頃とは違う。

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