「僕は4年待った」
渋川難波、決まり手は
情熱の喰いスライド!
文・ZERO/沖中祐也【火曜担当ライター】2023年1月10日
渋川難波の話をしよう(前編)
今期新人となる渋川の出だしは決して順風満帆ではなかった。
いや私は渋川の麻雀を見て、しばらく苦戦するのではと予想していたのだ。
シーン①
デビュー戦、渋川はこの配牌からを切った↓
8種8牌とバラバラだから国士に向かいつつ守備を固めよう、という思考である。字牌を重ねてのホンイツなど高打点のルートだけ残した手順だ。
しかしこの手牌、5受けのターツが3つあり、そのうちの2つがリャンメンである。
8種の中では十分戦える牌姿と言える。ひょいひょいと赤を引くだけで見違えるし、役牌…特にドラのを重ねると手牌の価値は急上昇する。
実戦でもすぐに裏目のをツモるわは暗刻になるわで先制リーチを逃していた。
結果論と一蹴できない選択だと私は思う。
シーン②
上家の親リーチを受けた場面↓
渋川は宣言牌のを合わせた。
このチャンス手、の暗カンが入っているのにでリーチするわけねーべ!とを直球勝負してもいいし、ワンチャンスのを切ってもいい場面だ。
後に渋川も「打はあまりに消極的だった」と反省する。
しかし、現物を抜いてしまった根源的な理由には本人も気づいていないかもしれない。シーン①・②に共通する病巣があるのだ。
その病名は「赤なし病」である。
シーン①
赤あり麻雀ならツモ次第で勝負手になるから19牌から切り出すのが自然であるが、赤なしなら国士の価値も大きく、見切るのも分かる。
シーン②
赤なし麻雀では赤あり麻雀と比較して、一発を避けることの重要性がとても高い。
(1ハン~3ハンの可能性が高く、一発による恩恵が大きい)
だからなんとかして一発を避けたくなるし、普段から1枚安牌を持ってスリムに構えたくなる。
とはいえ、渋川は柔軟性の高い打ち手だ。あらゆる土俵で戦ってきた経験を持っている。
東風戦、天鳳などの赤入りルールでの経験は豊富だし、最近では雀魂も打っている。
しかし、ここ数年は赤なしルールで打つことがほとんどだった。
自団体のタイトルを総なめにした成功体験から、赤なしルールの答えのようなものにたどり着いた感覚すら持っていたかもしれない。
体にこびりついた癖というのはなかなか抜けないものだ。
「赤なし病」が抜けないままでは苦戦を強いられる… 私はそう予想したというわけ。
さて以降の渋川がどうなったのか、続きは後半に譲るとして本編に入ろう。
第1試合
東家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
北家:日向藍子(渋谷ABEMAS)
揺るがない伊達の攻め
ゲームが動きだしたのは東2局。伊達が一発で切ったに渋川が声をかける。
リーチ・一発・ピンフ・ドラ・赤・裏、12000のアガリだ。
伊達は親の満貫テンパイが入っており、覚悟ができていたのだろう。
その表情は全く崩れることがなかった。
崩れないのは表情だけではない。
東3局、2巡目に伊達がドラのをツモ切った↓