放銃が見せた新しい姿 二階堂亜樹、戦ってつかんだ久しぶりの勝利【Mリーグ2022-23観戦記1/12】担当記者:東川亮

放銃が見せた新しい姿
二階堂亜樹、戦ってつかんだ
久しぶりの勝利

文・東川亮【木曜担当ライター】2023年1月12日

1月12日に放送されたバラエティー番組「アメトーーク!」のテーマは『プロ麻雀・Mリーグ芸人』「この熱狂を外へ」というスローガンを掲げるMリーグが地上波の人気番組で取り上げられ、数多くの人気芸人がその魅力を語るというのは、麻雀界における一大トピックスと言ってもいい。

おそらく、これから番組をきっかけにMリーグを見る人たちも増えてくるはず。Mリーグにはいろいろな魅力があるが、大和証券Mリーグ2022-23、1月12日の第2試合は、分かりやすく面白い、バチバチのぶつかり合いとなった。

第2試合
東家:二階堂亜樹(EX風林火山)
南家:内川幸太郎KADOKAWAサクラナイツ
西家:佐々木寿人KONAMI麻雀格闘倶楽部
北家:茅森早香(セガサミーフェニックス)

舞姫が見せたアガリの乱舞

リーチ一発ツモタンヤオ赤裏。
東1局1本場、親番の亜樹が前局のアガリに続き、ハネ満ツモで一気に持ち点を増やした。潤沢な手材料から素直に手を進めての高打点は、試合展開としてはあまりに恵まれている。

亜樹は前回の試合で、あまりに消極的な姿勢についてチームメートから指摘を受け、自身でも反省をしていたという。それを受けて強気に行こうと臨んだ一戦、序盤の大量リードはこの上ない後押しになったはずだ。

さらに連荘して、東1局3本場。この局の亜樹も、【發】が暗刻で早々にリャンメンリャンメンの1シャンテンと、非常にいい形だった。場に2枚切れの【南】を安全牌で抱えながらの進行だったが、ドラの【4マン】は切りたくないし使いたい牌なので、ここは目いっぱいに。

次巡、【4マン】を最高の形で生かせる【赤5マン】引き。

ドラ【4マン】を引き入れてテンパイ。47s待ち。三色は崩れても、ドラを重ねたなら打点は十分担保できる。

内川は試合後、この【7ソウ】切りを、「甘えてしまった」と悔いていた。局は既に終盤で、自身の手は受け入れの極めて狭い1シャンテン。亜樹がリャンメンターツ落としからのほぼ安全牌と言える2枚切れの【中】を手出ししておりテンパイ気配濃厚、そこに対して【赤5ソウ】が入ったとしても切る牌ではなかった、ということだ。

【發】ドラドラ赤、12000は12900。亜樹はこのアガリで、東1局にして持ち点が6万点を超えた。亜樹の楽勝ムードに思える展開だが、もちろんMリーグの対局はそう簡単には終わらない。

三度目の正直か、二度あることは、か

東1局4本場は、ようやく亜樹以外が先制テンパイを入れた。内川はもちろん、ダマテンにする。このままアガれるのはもちろんだが、何よりもこの手には、さらなる未来がある。

そこへ寿人がカン【2ピン】待ちでリーチ。この日誕生日の寿人だが、対局が変わるわけでもなく、リーチのムーブもいつも通りだ。

同巡、内川のテンパイ形が変わった。
ツモ【7ピン】、役満・四暗刻テンパイ。

内川は、1月6日の試合で1試合に2回四暗刻をテンパイし、いずれもアガれなかった。2試合で3回の役満テンパイは驚異的だが、とにかくアガれなければほとんど意味はない。そして今回は過去2回と違い、アガリ牌は3枚も山に残っていた。

内川と四暗刻と言えば、どうしたってMリーグ史に残る四暗刻単騎放銃が思い起こされる。あれから3年近くの月日が流れたが、いまだに当時の様子がCMで流れるなど、Mリーグ界隈随一の鉄板ネタとなっている。「アメトーーク!」でも当然触れられていた。

今となっては本人すらおいしいと思っているそうだが、それでもやはり自分がアガりたい。三度目の正直、過去と決別する最大のチャンス。いつも以上に眼光鋭く山に手を伸ばすが・・・

ツモアガったのは寿人だった。もはや内川は、Mリーグでは四暗刻をアガれない呪いにかかってしまっているのだろうか。

押すべき牌は押す、たとえ赤くても

話題を亜樹に戻す。東2局1本場、亜樹の手は第1ツモでテンパイした。リーチをかければダブルリーチだが、他に役もドラもない。

リーチをかける選択も十分アリだ。ただ、亜樹はテンパイそのものを外した。たとえ点数があったとしても、ラフな攻めはしない。

すぐに【白】をポンしてテンパイ。役がつけられたのは大きい。

その後、亜樹の待ちは【3ピン】【6ピン】【5ピン】に変化したが、そこへ寿人がテンパイで追いついた。ピンフ三色が確定した【5ピン】【8ピン】待ちは打点も十分。

亜樹が一発目に持ってきたのは【赤5マン】。寿人はマンズを1枚も切っておらず、2スジにかかる上に一発で放銃すれば大きなダメージを被る。とは言え、現状の現物はリーチ宣言牌【6ソウ】のみで、抜けば手が崩れるし、その後に切っていく牌も厳しい。

それほど時間をかけず、亜樹は【赤5マン】を押した。もしかしたら、これまでだったら押さない牌だったかもしれない。

もちろん、待ちの良さや現状の点数状況も考慮していたはずだ。その上で、唇をキッと結び、歯を食いしばって放った一打は、この日重ねたどのアガリよりも、亜樹の闘う姿勢を象徴していた。

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