優勝争いの最中で、
4人が見せた
それぞれの『らしさ』
文・東川亮【木曜担当ライター】2023年5月18日
朝日新聞Mリーグ2022-23ファイナルも、いよいよ大詰めを迎えようとしている。
5月18日第2試合、全16試合中14試合目となる本記事の試合は、結果によってはいろいろなものが最終日を待たずに決まってしまいかねない、非常に重たい意味を持つ一戦だった。
平常心を保つことすら難しいなかで、それでも選手たちはみな、それぞれの『らしさ』を見せていたように思った。

第2試合
東家:瀬戸熊直樹(TEAM雷電)
南家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:二階堂亜樹(EX風林火山)
北家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
瀬戸熊直樹の、瀬戸熊直樹らしさ

東1局1本場、物議を醸すシーンがあった。
瀬戸熊がツモろうとした牌を落としてしまい、それが山にぶつかって牌が1枚見えてしまったのだ。見えた牌は、瀬戸熊のアガリ牌。そしてツモ番がズレなければ、その
は瀬戸熊が2巡後にツモることになる。

もちろん、アガるのはルール違反ではない。だが、瀬戸熊はアガらずにツモ切った。

そのを亜樹が鳴いてテンパイし、

タンヤオドラドラ赤の満貫をツモアガった。瀬戸熊としては、加点・連荘していたはずの親番を失点で落とすことになった。

瀬戸熊は、自身の麻雀打ちとしてのポリシーに殉じたのだという。もし見せ牌でアガって勝ったとしても、その勝利を果たして誇れるのか。瀬戸熊の麻雀人生は、これからも続く。その道のりを麻雀プロ・瀬戸熊直樹として胸を張って歩み続けるために、自らの過失による見せ牌でのアガリを拒んだのだった。
もちろん、これはチームの最終結果に直結しうる判断であり、賛否両論があってしかるべき場面だ。
チームが試合後に公開した動画によると、今後このような場面では「ルールに抵触しない場面であれば、アガれるときはアガる」という方針を定めるという。
ただ、SNS上などで確認する限り、少なくとも雷電ユニバースの間では瀬戸熊の決断を支持する声が多かったように見受けられた。
見せ牌とはいえアガるのがノーマルに思うし、少なくとも自分だったらアガる。だが、そこで自らの美学を貫くのが瀬戸熊直樹らしさであり、瀬戸熊直樹のカッコよさ、人を惹きつけるところなのだと感じた。
高宮まりの、高宮まりらしさ

南2局1本場。
高宮は6ブロックに構えていたところにペンとペン
のターツ選択を迫られ、ペン
ターツを選んだ。
多井が序盤からピンズの真ん中をバラ切りしている分が少し良さそうに見えるが、高宮はそれよりも、自身が切っている
のスジとして
が打たれる可能性を考慮した。よりアガリを狙う積極的な判断だと言える。

テンパイ。だが、瀬戸熊から先制リーチがかかっている。切りか
切りだが、
ば瀬戸熊に放銃となる。

高宮はさほど時間を使わず、を切って
のシャンポン待ちでリーチをかけた。待ちはどちらも河に1枚見えだが、それなら種類が多いほう、そして裏目も瀬戸熊の現物ということでの選択だったという。

ペン待ちは山になく、
待ちは山に
が1枚だけ残っていた。それをツモり、僥倖の裏3により、打点は6000は6100オールまで跳ね上がった。

この試合、高宮にトップが求められるのはもちろんだが、たとえトップが取れなかったとしても、少なくともABEMAS・多井より上の順位で試合を終えることが最低限のミッションとなっていた。
それが、この一撃によってトップラスという最高の形で実現するところまで見えて来た。麻雀格闘倶楽部ファンが色めき立つ。

しかし次局、亜樹のあまりにも早いリーチ、そして一発ツモで、トップは遠のく。

迎えた南4局、高宮は1巡目からをチーした。
の後付け、あるいはチャンタという進行だが、いずれにせよ打点は安い。亜樹との17400点差を逆転するには最低でもハネ満直撃が必要、そして自身の手材料にそれは見込めないということで、すぐに2着狙いへと方針を定めた。

ポン、カン
チーと機敏に仕掛け、
チャンタのテンパイ、カン
待ち。
は多井の現物であり、比較的打たれやすい部類の牌のはずだった。

だが、が打たれる前に多井のリーチが襲いかかる。待ちは
。

それをまさか、一発でつかむとは。

高宮の二つ名は、神話の戦士「ベルセルク」。ここも彼女らしく、戦いを挑むのは必然に見えた。

しかし高宮は、を抜いた。もちろん、戦いたいのはやまやまだ。とはいえ、河にはソーズの上目がほとんど切られておらず、
は危険過ぎる。いかにカン
待ちが狙い目ともいえど、その前に打つ
のリスクを考慮し、高宮は迂回を選んだ。
