『打倒・瀬戸熊直樹』へ
和久津晶が闘いの果てに
たどり着いた未踏の地
【決勝卓】担当記者:東川亮 2023年9月24日(日)
麻雀最強戦「打倒最強位決戦」に集められた8名。彼らにはそれぞれに、戦う理由がある。
盟友として力をぶつけたい者。
最強戦で敗れた借りを返したい者。
実行委員会から最強位を狙うに足ると評価された者。
そんな者たちがふるいにかけられ、4名が脱落。決勝卓は「萩原聖人・小林剛・宮内こずえ・和久津晶」という組み合わせになった。最強位・瀬戸熊直樹に挑む権利を得られるのは、たった1人。
■小林剛はいつだって小林剛
小林は紹介VTRで「麻雀界での実績に比べて最強戦で目立っていないメンツが集められたのかな」と話していた。少なくとも、自身を指して言っているのは間違いない。
だからと言って、最強戦に特別な気合いを入れて臨むような男ではない。小林はいつだって、麻雀プロとして小林剛の麻雀を打つ。
東1局は、早々に中を仕掛けてアガリに向かうと、萩原のリーチに押し切って2900を出アガリ。
一方で、仕掛けた後の形が悪く打点もないとなれば、軽々に仕掛けて守備力を落とすようなことはせず、
萩原のリーチがかかった後は、テンパイだからといって無理な押しはせず冷静に立ち回る。決勝卓において小林は3回のアガリを決め、放銃は1000点が1回だけ。実に小林らしいスタッツで、この試合を終えた。
■萩原聖人は、友である最強を目指した
萩原にとって、瀬戸熊直樹は盟友である。Mリーグ・TEAM雷電で5年間に渡って苦楽を共にした、同世代の尊敬すべき麻雀打ち。そんな男といつか大舞台で真剣勝負をしたいという思いは、おそらく心のどこかに持っていたはずだ。
萩原は東場だけで6度のリーチをかけ、2度アガった。リーチはいずれもリャンメン以上の待ちをしっかりと作ったものだった。
中でも萩原らしい手組みだったのが、東3局2本場の切り。ぱっと見はリャンメンターツを破壊する一打だが、チートイツと三色という両方の手役を見た上で、最も不要な牌から処理していく。
が暗刻になったところでタンヤオに移行、最終的にはタンヤオ高目イーペーコーの手に仕上げてリーチ。
残念ながらアガリには結びつかなかったが、萩原聖人も意志のある麻雀を貫き、友の待つファイナルを目指した。そして強者との真剣勝負を、「楽しかった」と振り返った。
■宮内こずえ、果たさなければならないリベンジ
「最強戦」と「瀬戸熊直樹」のワードが並ぶとき、最も心をかき乱されるのは、おそらく彼女だ。
2年前、宮内は最強位の座を手中に収めかけていながら、瀬戸熊の奇跡的な倍満に屈した。麻雀人生に残る苦い記憶を払拭するには、瀬戸熊を倒して最強位を獲るしかない。
だが、最強戦は宮内に試練を与える。
アガリが遠く、放銃をせずに耐えるものの、他3者のツモとテンパイ料によって持ち点は1万点を割り込んでいた。
南3局2本場、ラストチャンスかもしれない手が入る。
ダブ南から鳴いて、手の内は中のトイツにドラ色のピンズが多め。ダブ南中ホンイツドラのハネ満に仕上がれば一気に優勝戦線へと食い込める。
を鳴いて手を進めたところに和久津のリーチがかかるが、テンパイならばとドラを押して勝負。
宮内とて、これまでに数々の修羅場を経験している。
ここで引いては勝利をつかむことなど、瀬戸熊との再戦にたどり着くことなどできないと、理解している。我慢に我慢を重ねながら、宮内も最後まで戦い続けた。
■和久津晶、憧れの背中を追って
和久津にとって瀬戸熊はライバルであり、ずっと追いかけたい背中を見せ続けてくれいる、尊敬すべき先輩である。「瀬戸熊と打ちたい」、その一心で和久津は日本プロ麻雀連盟最上位・A1リーグにたどり着くまでの打ち手になった。最強戦は、そんな瀬戸熊直樹が王者として待ち構える、和久津にとって絶好の舞台。
瀬戸熊さながらに、和久津は攻めた。
東2局2本場、ポンの宮内に字牌を被せて自身も仕掛け、ソーズのホンイツが濃厚なところにも押し、500は700オールのツモアガリ。
東3局2本場、萩原のリーチに対して待ちの役なしテンパイを入れていたところに4枚目のを引くと、少考の後暗槓。
リンシャン牌でを引き入れ、リンシャンツモの700-1300。
勇気あるアタックでアガリをものにしていく。
和久津にとって最大の勝負局となったのが、宮内とぶつかった南3局2本場だった。
先にテンパイしたのは和久津、待ちでリーチ。ドラが1枚あって、アガれればトップ目に立ってオーラスを迎えられる。ただ、先述の通りは宮内と持ち持ちだった。