応援を背に、不死鳥はもう一度空へ
魚谷侑未が右手に宿した青き炎
文・東川亮【金曜担当ライター】2024年3月15日
大和証券Mリーグ、2023-24レギュラーシーズン。
混迷を極めていたボーダー争いは、各チームが残り10戦を切ろうかというタイミングで大きく動いた。火曜、木曜と連戦だったEX風林火山が両日とも松ヶ瀬隆弥→勝又健志のリレーで臨み、3トップ全連対と一気にポイントを稼いで混戦から一歩抜け出す。
追うチームとしてはターゲットが明確になったものの、残り試合を考えればこれ以上離されるわけにはいかない。
3月14日の試合結果によっては、今シーズンの終戦すらちらつく状況。
第1試合、BEAST Japanextは中田花奈を起用した。彼女のトップはチームに取ってこれ以上ない追い風となる。
セガサミーフェニックスからは魚谷侑未が出場。彼女の場合はまさにチームを引っ張る立場である。大舞台の経験は随一、ここでその力を発揮できるか。
いや、発揮しなければならない。
第1試合
東家:中田花奈(BEAST Japanext)
西家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
北家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
-中田花奈への逆風-
試合序盤、中田には逆風が吹いた。
東1局は早々に役牌を仕掛けた速攻の魚谷に1000点の放銃。続く東2局では、渋川のリーチに飛び込んでしまい、8000点を失う。
自身はドラ赤、3900のリャンメン待ちテンパイだった。ある程度押す手ではあるが、それが捕まるのは具合が悪い。
さらに次局はリャンメンカンチャン、ドラ赤で打点もある1シャンテンからをツモ切ると、
直前にカンチーでテンパイを入れていた渋川からロンの声がかかる。赤、2000点。中田は3局連続の放銃となった。
この日、控え室にはチームメンバー4名が勢揃いしていた。つまり、全員を使える状況にはあったということだ。だが、チームは事前の決定通りに中田を試合へと送り出した。彼女がその意味を理解していないはずがない。
絶対に勝たなくてはいけない試合で、失点ばかりが重なり、中田の表情がゆがむ。だが、それでも彼女に逃げ場はなく、不運を呪い現状を悔やむ暇などない。やるべきことは一つ、勝利を目指して最善を尽くすだけだ。
-魚谷侑未の覚悟-
フェニックスは、試合開始時点でBEASTよりさらに遅れをとっての8位。中田以上にトップが欲しい立場と言える。
東4局、松本の先制リーチが入っている状況で、カン待ちと愚形ながら追っかけリーチをかけた。は松本の現物で自身の中スジ、リーチの松本はもちろん、手詰まった2人から選ばれるかもしれないを取り逃すのはあまりに痛い。
もちろん、リスクは覚悟した上での決断である。魚谷がツモ切ったに、松本の「ロン」の声。
リーチピンフ赤赤、8000の放銃。苦戦を続ける2チームの状況がそのまま表れたかのような点数状況で、東場が終わった。
南1局は、中田が他3者に先んじてテンパイを入れる。ホンイツ、ツモれば2600オールとそこそこの打点で、トップも現実的に見えてくるようになる。
そこに魚谷が追いつく。ピンフドラ赤、待ち。ホンイツの中田と色はかぶっていないが、出ていくのが、中田には通っていない。
テンパイならばとノータイムで勝負に行く打ち手もいそうだが、魚谷は考える。おそらく、後から可能性に気付くのが嫌なのだ。本当にそれでいいのか。何か別の道はあるのか。
少考の末、魚谷はリーチをかけた。大半の打ち手が同じ選択になりそうだが、ここで考えることに、魚谷の強さを見た気がする。怖さを受け入れた上での勇気。
これを終盤に手詰まった松本から捉え、8000のアガリで再度トップ戦線に復帰。松本は2人への現物がなく、中田のスジで3枚見えというところからひねり出しただった。
魚谷は攻める。南2局はカン待ちを迷うことなく先制リーチ。愚形テンパイでもよどみなくリーチとこられると、相手としては待ちが十分形に見えてやりにくいところがある。もちろん、それもわかった上でのことだ。