因幡はねるが今シーズン、絶対に対局したい相手を、1人挙げた。
その相手は、松本吉弘。
因幡にとってみれば、2年間、チームヘラクレスとして共に歩み、そして栄冠を手にした、相棒ともいえる存在。
それは、松本にとっても同じ。
神域だけでなく、因幡が作るコンテンツの数々は、松本が配信をするにあたって大きな力になっていた。
人一倍、因幡の凄さを知っている人物でもあるのだ。
そんな2人が、今宵神域リーグの舞台で初めて対局する。
「もってぃをこらしめられるのは、私だけでしょう! 」
気合は十分。
麻雀を教えてもらった時間は、きっと誰よりも長い。
成長した所を見せ、この対局に勝つことが、何よりの恩返しだと思うから。
さあ、最高の恩返しをしに行こう。
第6節 第2試合
東家 松本吉弘 (チームヘラクレス)
南家 因幡はねる(チームグラディウス)
西家 咲乃もこ (チームアキレス)
北家 桜凛月 (チームゼウス)
第2試合は、重苦しい幕開けとなった。
まずは東1局。桜のリーチが入るも、終盤に連闘連勝を狙う松本がテンパイを入れて流局。
続く1本場。今度は松本の親リーチに対して、桜と因幡が終盤にテンパイをもぎとった。
3人テンパイで流局。
「うぉ、やるなあー……やるねえ」
相手を賞賛しながら……どこか松本の声音は、楽し気な色を含んでいた。
もう一度流局を挟み、供託が3本にまで膨れ上がった、東1局3本場。
最初に動いたのは因幡だった。
とがトイツのこの手は、鳴いた方が圧倒的に速い。
のポンから発進して、アガリを取りに行く。
とまで鳴けて、因幡にテンパイが入った。
ドラの5m単騎。少しアガリにくい形にはなってしまったが、これならば8000点の高打点だ。
その因幡が欲しいドラのを、3枚抱えていたのが桜だった。
ペンを外して、カンチーから発進。ドラが沢山あって手牌価値が高い時に、こうして動けるようになったのが桜の強み。
3副露している因幡に対してタンヤオで真っ向勝負。
桜がこの手を成就させることに成功。咲乃から8000の討ち取り。
カンチーから発進してのタンヤオが、見事にハマった。
供託も回収して、まずは桜がリードを奪う。
東2局
親番を迎えた因幡の配牌……はあまり良いとは言い難い。
しかし今は親番。真っすぐに手を進めていく。
ツモが良く、6巡目にタンヤオのイーシャンテンに辿り着いた。
を引いて、ソーズの形が引き締まる。
ここはを切って目一杯。ソーズの形はの他にの受け入れがあることを、因幡は理解している。
を引いて、打。
の受け入れは無くなるが、この打は悪くない。
を縦で引いた時に、タンヤオ三色の価値あるイーシャンテンに移行できる。先にを引いた時も対応可能だ。
因幡は9巡目に松本から切られたをスルー。
自身の手の内を含めて4枚目のは、チーしたくなる気持ちもあるが、ここは我慢。
因幡はこの手をメンゼンで仕上げると決めた。
この時、因幡には手応えがあった。それは――