それに、6巡あればあの手がここまで変貌することだってある。内川の手は急所を続々と引き入れ、一気通貫含みの1シャンテンとなっていた。

場に3枚目のカンをチーして一気通貫のテンパイ。
出ていくドラを仲林に鳴かれてしまうが、

あの手がまさかアガれるとは。一気通貫赤の1000オール、親番をつなぐ。

そして内川にとってこの試合最後の山場となったのが、南3局1本場だった。
まずは萩原が2つしかけてと
のシャンポンテンパイ、どちらでアガっても満貫。

さらに、タンヤオ赤赤でテンパイしていた仲林の手に三色までついた。ダマテンでもツモればハネ満という大物手に。一見よくなさそうなカン待ちは、なんとこの時点で4枚山。

そのを内川が引く。
自身の手はチートイツとメンツ手両天秤のような形。自分の手だけを考えるなら、ここでを切って
待ちになったときに強くする、という策もありそうに見えたが、そうなれば仲林への満貫打ち込みとなる。

ただ、局はほぼ終盤、ここで1シャンテンから必要以上にリスクを負うほどではない。1シャンテンキープだが切り。シンプルに、見た目枚数が
のほうが多かった、ということもあったかもしれない。

では、テンパイならどうか。を切ればイーペーコー、
を切ればチートイツ。待ちが2種類あるイーペーコーに取りたくなる打ち手もいそうだったが、

内川はもともと、この手をほぼチートイツに絞っていたという。たしかには場に1枚切れ、特にソーズは下目がほとんど場に切られておらず、数巡前の仲林の
手出しなどを鑑みると、山にはあまり残っていなさそう。
単騎が決していいわけではないが、それでもシャンポン待ちよりはマシだし、アガれたときの打点もこちらのほうが少し高い。いずれにせよ、内川は放銃を回避。

アガリが生まれず流局となった1局だったが、内川にとっては紙一重の放銃回避。今は、その結果が大きい。

大トップとはならなかった。しかし、対局場を桃色に染めるという、自身に課された最低条件はクリアした。

役目を果たし、内川は託されたバトンを仲間につなぐ。

次戦にそれを受け取ったのは、今期まだ勝利のない、岡田紗佳だった。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。