
あの瞬間。
萩原が想いを込めて切り出したリーチ宣言牌。
しかしその牌に、仲林が迷いなくアガリを宣言する。
それは、三者にとってあまりに静かな時間に感じ、あまりにも残酷な一声だった。なぜなら、仲林が2着目に居続ける限り…。追いかける側には重くのしかかる条件が突きつけられ続けるからだ。

一瞬だけ、ほんの僅かに、下を向いたように見えた二人。
しかし、この漢だけは腹を括ったように前を向く。
その胸に── いや、背中に炎を宿したような気配をまとっていた。

醍醐大であった。
彼には負けられない理由が特別に存在していたのだから…。

揺らぐ炎を映し出すかのように、手牌には赤牌が確かに燃えていた。
もし麻雀に“流れ”というものがあるのだとしたら恐らく、それが醍醐に傾くことは無かったように見える。
でも、日常の中にも、ふと訪れる“幸運”って確かあったよな。気まぐれのように、不意に舞い降りる小さな奇跡ってやつ。

醍醐にテンパイが入った。
リーチ・赤・赤待ち。

チームのモチーフとなっている不死鳥が重なる。
卓上に燃えさかる炎があるならば、鎮火へと動くのは海賊船クルー・仲林であった。

宣言牌のを仕掛けて、タンヤオ方向へ舵を取ると

普段の仲林は、手牌読み・期待値・通っている筋の本数などを頼りに、バランスを取りながら押し引きを図るタイプである。
しかし、この“土俵”に立った瞬間、そんな理屈など、もはや意味を為さない。ここさえアガり切れば優勝に大きく近づける事を誰よりも知っているのだから。

だからこそ、たとえ次に醍醐への放銃となる牌を引いたとしても。
彼はそれを強打することなく。まるで当然の選択であるかのように、静かに河へと置くのだ。その証拠に、最終手出しをぼかす為に、しっかりと空切りをしているのが“仲林らしい”。
ただ、らしく無かったのは…

醍醐の手牌が倒された── その現実を目の当たりにした瞬間。

それは、これまでに見たことのない仲林の姿だった。
最後に舞い降りた偶然──そして、歓喜と涙──
昨年9月から、長きにわたって熱戦が繰り広げられてきたMリーグ2024-25シーズン。
レギュラーシーズン、セミファイナル、そしてファイナル。その累計は、実に262半荘。局数に換算すれば、およそ3,000局にものぼる。
南4局3本場

仲林からの直撃をきっかけに、
醍醐がトップ目でオーラスを迎えていた。
仲林は親。
よって、ここでの焦点は── 園田と醍醐の着順勝負。
その差は、わずか5,500点。
ただし、ここで画面左上の点棒表示をご覧いただきたい。供託1本、そして3本場。
この要素を加味したドリブンズの優勝条件は──
◉ツモアガリ
→ 700・1,300
◉出アガリ
→ 醍醐から1,600
→ 仲林 or 萩原から3,900