「焦らず、自信を持って、練習通り」
文・中野巧【火曜担当ライター】2025年10月7日
私の麻雀プロの試験に合格したとき、「このタイトルを取る」、「こんな麻雀を打てるようになる」、という表の目標と麻雀に関係ない裏の目標を立てた。
裏目標の1つが「滝沢さんと仲良くなる」だった。
理由は、滝沢の画面越しからでもわかる優しさと、SNSの発信からわかるユーモアさに惹かれ、一度でいいから会って話してみたいと思っていた。
その日は突然訪れた。
まだプロになって数カ月のある日、とある会に滝沢が顔を出しに来てくれたのだった。
ただ私はその時、初対面かつ大先輩である滝沢に対して、「もっとガツガツした麻雀を打つ滝沢さんが見たいです」と受け取り方によっては失礼すぎる発言をしてしまったのだ。
それに対して滝沢は「自分も来年からは少し変えようと思っています」と素直に自然体で答えてくれた。
その半年後には、それっきり会っておらず、失礼な印象を持たれていてもおかしくない私からのオファーを受け麻雀最強戦のチームバトルに出てくれることになった。
滝沢にとってメリットがないにも関わらず。
なぜオファーを受けてくれたのかを聞くと、「誘ってもらって嬉しかったから」と。
その気持ちは事実かもしれないが、それだけではないだろう。
これはあくまでの私の考えだが、同じ連盟の後輩が誘ったことに対して応じようとする男気、自分が出ることで少しでも大会が盛り上がればという業界やそれにかかわる人への思いやりだと思っている。
そんなハートが男前な滝沢が今日の1戦目に登板した。
早速、滝沢にLINEで試合前の気持ちを聞いた。
「焦らず、自信を持って、練習通り」という気持ちと、ここまで結果が振るわないことに対して、「応援してくれる方々とスポンサーの方々に申し訳ない」気持ちでいっぱいだという。
ここまでKONAMI 麻雀格闘倶楽部は12戦トップがない。
果たして今シーズンから監督と選手を兼任しチームを引っ張る立場の滝沢は上昇するきっかけをつかめるのだろうか。
第1試合
西家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
北家:滝沢和典(KONAMI 麻雀格闘倶楽部)
これまで滝沢の試合をずっと見ていて思うのが、ここ最近少し麻雀が変わり、積極的な選択肢が増えたように感じる。
例えばこちらのシーン。
東1局1本場
6巡目に下石が1枚目のをポンして打
。
のみのテンパイを入れる。

同巡、滝沢が瑞原の切ったを滝沢がチー。
456の三色となれば満貫のイーシャンテンに。

この時、滝沢の思考としては主に2点だ。
まず自分の手に赤が2枚あり価値ある手であること。
次に仕掛けた下石の捨て牌が濃く、テンパイが早そうなため、速度を合わせた。
もしかすると上記に加え、親の松本も、
と本来であれば使いやすい牌を切り出しており、テンパイ速度が速いと読んだかもしれない。
この状況じゃなければまだ6巡目、ハネマン以上の手を狙ってメンゼンで進めることもありうるだろう。
実際、下石はをポンした時点でテンパイのため、読みはばっちりあっている。
ただ結果は下石のアガリに。
ただ、前巡にを残していればチャンタがついていたが、滝沢の仕掛けに対して対応し、万が一でも放銃しないよう打
とした。
ここは交し手、局を流すのが優先と判断したのだろう。

東4局
こ東1局同様に、下石の仕掛けに対して滝沢が速度を読み切るシーンがあった。
まず下石がをポンし、打
。

この下石の仕掛けから読み取れるのは、ドラがであるため、よほどの理由がない限りは
を赤牌でもないのにポンしないだろう。
また河も真ん中の牌が多く、手は早そう。
つまりテンパイである可能性が高い。