夫に託された夢を背に 石田亜沙己、決勝へ【麻雀最強戦2025 最強夫婦決戦】観戦記【B卓】文:喜多剛士

東3局

これまで手牌に恵まれなかった手塚に、ようやく好配牌が訪れる。3シャンテンながら、すでに1面子と雀頭、両面ターツが2つ揃い、234の三色も見える形。親番での反撃に期待がかかる。

そして、順調にツモを重ねて【1マン】【4マン】【7マン】の3面張でリーチ。点数状況を踏まえれば、ここは何としてもツモって連荘したい場面。山に7枚残っており、盤石のリーチという空気が卓上に漂う。

しかし、手塚がなかなかツモれない中、石田がペン【3マン】を引き入れて親リーチの現物であるカン【5ピン】イーペーコーのテンパイ。【6ピン】を押してテンパイを取りにいく。

その直後、浅見が親リーチの現物である【5ピン】をツモ切りし、これが石田への放銃に。イーペーコー・ドラ1の2600。石田が手塚のリーチを見事に交わす形となった。

先ほどの早川に続き、手塚も3面張のリーチが交わされる厳しい展開。負けている二人に、逆風が吹き続けている。

 

南3局1本場

南2局が流局となり迎えた南3局1本場。親の手塚は、ここを落とすと勝ち上がり条件が一気に厳しくなる。A卓では夫・佐々木寿人がすでに勝ち上がっており、夫婦対決の舞台を実現させたいところ。

親の手塚の配牌は【東】【西】のトイツ。形は苦しいが、ホンイツや四喜和まで見える高打点の可能性を秘めた手牌。負けている状況だけに、ここはなんとしても活かしたい。

【東】【西】をポンして四喜和の芽を残しつつ進行。ドラの【2ピン】や索子の伸び次第ではホンイツへの移行も可能。場合によっては【東】のみでも親を継続する価値があるため、派手な仕掛けで周囲の足を止めにかかる。

ここで四喜和は諦め、親の連荘にかける現実的な選択へ。どうしても一撃で決めたい気持ちはあるが、負けている時の親番は何よりも連荘が優先される。ギリギリまで夢を捨てきれない中での、冷静な判断だった。

手塚が連荘に希望をつなげるテンパイを入れる。待ちは【3ソウ】【4ソウ】

しかし、早川の手も伸びる。【3マン】が4枚見えて【3マン】【6マン】の形が弱いため、【1マン】を外してタンヤオを確定させる。

そして早川がテンパイ。【4ソウ】【7ソウ】のノベタンか、【2マン】【5マン】の選択。早川の目から【3マン】が4枚見えており、【2マン】が使いにくい状況。親の手塚が掴んだ際に使い道がなく、放たれやすい【2マン】を含む【2マン】【5マン】を選択する。

その読み通り、手塚が【2マン】を掴んで放銃。リーチ・ピンフタンヤオイーペーコーの8000点。親番で勝負をかけた手塚だったが、現実の壁に阻まれる形となった。佐々木・手塚の夫婦対決の夢は、ここで遠のく厳しい展開となった。

 

南4局

迎えた南4局。厳しい展開が続いていた早川だが、南3局の8000点加点により、勝ち上がり条件まで残り8400点。ここで敗れれば、A卓の渋川難波とともに夫婦そろって敗退となるため、何としても勝ち上がりたい。

一方の浅見は、勝ち上がれば夫・橘哲也との夫婦対決が実現する。浅見が敗退すれば、まさかの決勝卓が“他人対決”になる可能性もあるオーラスとなった。

四者がなかなか手を進められない中、浅見は苦しい形ながら【3ピン】を暗刻にしてリャンシャンテンに。

トイツが多く手が重い早川も【5ソウ】をポンしてリャンシャンテンへと進行する。

ここでイーシャンテンとなった早川に選択の場面が訪れる。打点を重視するなら打【3マン】でドラの【5ピン】をギリギリまで引っ張る構えもあるが、【6マン】【7マン】のターツが埋まった際には、カン【6ピン】【7ピン】【4マン】のシャンポンという厳しい待ちになってしまう。

一方、ドラ【5ピン】を外せば、【6マン】【7マン】が埋まった際に【2マン】【5マン】【7ピン】【2マン】【5マン】【8マン】【7ピン】といった広い受け入れが残る。

ただし、ドラ【5ピン】を放つことで副露している早川からリーチが無いので打点が低くなる。そのため、浅見や石田から役無しリーチでアガリに向かわれるリスクが高くなる。

それでも早川が選んだのは、アガリやすさを優先する打【5ピン】。勝ち上がりへ向けて、現実的な一手を選び取った。

その直後、浅見に【1マン】【3マン】のシャンポンテンパイが入る。親の早川は【5ソウ】をポンしており、役牌もすべて場に見えているため、役はタンヤオトイトイが考えられるが、ドラ【5ピン】を外していることから、ドラ【5ピン】を暗刻から1枚外しての雀頭の可能性は低い。タンヤオ・ドラ1の2900が濃厚。また、石田からの【1マン】差し込みも視野に入る。仮にトイトイで早川に放銃してもオーラス続行で敗退は確定しない。ここで決めに行く方が優位と判断し、浅見はリーチに踏み切る。

早川もテンパイ。【3マン】【4マン】の比較では、【4マン】は2スジ通っておらず、【3マン】を外せば【6マン】【7マン】を引けばトイトイへの変化も見込める。危険牌の【2マン】を引いた際には暗槓で回避できるため、早川は【3マン】を選択。

しかし、その【3マン】が浅見への放銃に。リーチ・ドラ1の3200。

見事に浅見と石田が勝ち上がりを決めた。

東場では、3面張のリーチがことごとく交わされる展開が続き、一打の選択が持つ重みが際立った。特に早川は、東2局でのドラ3の勝負リーチが交わされたのが痛手となり、勝ち上がりへの道を大きく遠ざけられる結果となった。

手塚は、終始苦しい配牌と展開に見舞われながらも、最善の形を追い求める粘り強い打ち回しを披露。しかし、決定的なアガリには結びつかず、流れを変えるには至らなかった。

石田は、東1局1本場で【東】をスルーしてホンイツに仕上げた一局が圧巻。冷静な判断と構想力が光り、卓上を支配する存在感を見せた。

浅見は、Mリーグという大舞台での経験を活かし、終始落ち着いた立ち回りを展開。要所でのリーチ判断や押し引きのバランスも見事で、南4局での勝ち上がりを決めたリーチは、覚悟と読みの深さが表れた一打だった。

そして浅見真紀は、夫・橘哲也が待つ決勝卓へと歩を進めた。

一方、石田亜沙己は、猿川真寿の敗退を背に、己の力で勝利をつかみ取った。

卓上に刻まれた一打一打が、それぞれの物語を静かに紡いでいく。

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