「ガラクタ」の枠を超えた真価 佐々木寿人が魅せる進化の証【Mリーグ2026-27 観戦記 9/24 第1試合(麻雀2ch)】担当記者 喜多剛士

七対子・赤1の3200点。

結果だけを見ればたろうの放銃だが、内容は決して悪くなかった。セオリー通りに進めていれば回避できた放銃ではあったものの、たろうは場況を丁寧に読み、見た目のリャンメン待ちという先入観にとらわれずに選択していた。

読み通り【7ソウ】は山に残っていた。しかし、その牌は寿人の手に流れ、さらに薄い【8ソウ】を引いたことで【7ソウ】が押し出される格好となる。

放銃という結果には終わったものの、たろうの場況判断の鋭さが垣間見えた一局だった。

 

南1局

たろうは寿人への放銃こそあったものの、直後に2600オールのツモアガリ。点差を縮め、しぶとくトップ争いに食らいつく。

続く南1局では、瑞原が絶好の【赤5ピン】を引き入れて3面待ちでリーチ。これに永井が捕まり、12000点の放銃となった。

瑞原と寿人の点差は一気に接近。トップ争いは混沌とした様相を呈していく。

さらに南2局では、たろうが2000・4000のツモアガリ。寿人、瑞原、たろうによる三つ巴の戦いとなった。

 

南3局1本場

そして迎えた南3局。親番の永井はここで連荘できなければラスが濃厚な状況だったが、執念のテンパイで流局に持ち込み、南3局1本場へとつないだ。

寿人の手牌は9種11牌。国士無双が見えるが、役牌を仕掛けての手作りも可能な形となっている。

ここまでの寿人は形が十分な状態で仕掛けていたが、この局面でどう動くのか。

すると瑞原から放たれた【南】をポンして打【9マン】。

通常、仕掛けや派手な捨て牌は他家の警戒を招き、必要牌を絞られやすい。しかし今回は事情が異なる。

親番の永井は連荘できなければラスが濃厚な状況。守備一辺倒ではいられず、手を進めてくる可能性が高い。

そこで寿人は【南】と【白】を仕掛けてホンイツやトイトイを絡めることで点も十分である事から積極的な仕掛けを優先した。

さらに永井から【9ソウ】が放たれるとこれもポン。打【1マン】として2副露しているが3シャンテンの手牌でまだ苦しい形。

しかし、永井以外の2人にとっては踏み込みにくい状況となった。

その後、寿人は【3ソウ】・【5ソウ】を引き入れ、【白】をポン。【北】単騎待ちのテンパイを入れる。

しかし、その【北】は瑞原の暗刻。山には残っていない。

順子部分にくっついて亜リャンメンやノベタン待ちへ変化すれば、アガリの可能性が復活する。

次巡、ドラの【西】を引き入れる。

待ちを変えれば跳満まで見込めるが、【西】はすでに場に2枚切られている地獄待ち。寿人はここで無理をせず、【北】待ちを継続して次巡【6ソウ】を引き入れてノベタン待ちを選択する。

その直後、たろうが寿人のアガリ牌である【6ソウ】を引き入れた。

寿人はションパイの【北】を切り出しており、仕掛けの状況からもテンパイは濃厚。【7ソウ】が4枚見えているため【6ソウ】【9ソウ】待ちはない。単騎変更であれば東は切れない。索子の待ち変更となると【2ソウ】【5ソウ】と【3ソウ】【6ソウ】待ちの可能性が残り【6ソウ】は約1/2で放銃となる。

たろうは熟慮の末に自身の手牌価値と比較して打【6ソウ】で勝負の選択した。

しかし、その【6ソウ】が寿人への放銃となる。

【南】・【白】・ホンイツの8000点。

ここまで仕掛けを我慢し続けてきた寿人だったが、勝負どころと見た局面では一転して積極策を選択。3副露から見事にアガリをものにした。

瑞原を交わした寿人は、そのままオーラスで1000-2000をツモアガリで見事にトップを決めた。

瑞原は親番で満貫をアガリ、放銃もなく失点を最小限に抑えながらトップ争いを続けた。大きく崩れる場面もなく、安定した内容だったが、最後は寿人の手数がわずかに上回った。

たろうは随所に鋭い読みを見せ、セオリーだけにとらわれない独自のルートを選択していた。しかしこの半荘では、寿人がテンパイした直後など、止めることが難しいタイミングでロン牌をつかむ場面が重なった。放銃という結果以上に、巡り合わせの不運が目立つ半荘だったように思う。

永井はドラを引き入れて打点の見える手牌にはなるものの、あと一歩アガリまで届かない苦しい展開。親番では6000オールまで見据えたリーチを放つなど、最後まで高打点を狙う永井らしさを見せた。結果は連続ラスと厳しいものになったが、焦らず昨シーズンの勢いを取り戻したいところだ。

そしてトップを獲得したのは寿人。

積極的にリーチを放つ「ガラクタリーチ」を代名詞としてきた寿人が、この半荘ではわずか2回のリーチながら6回のアガリ。東1局のダマテン、東3局1本場での役牌スルー、そして南3局1本場での一転した3副露と、局面に応じて攻撃の形を変えながらアガリを積み重ねた。

「攻める寿人」が、攻めないことの価値まで使いこなす。

これまでの強さに選択肢の幅が加わったのだとすれば、今シーズンの寿人はさらに手強い。

進化した佐々木寿人が、Mリーグを席巻するかもしれない。

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