先ほどの高宮の手でも書いたように、トップ争いをしているオーラスではチートイツは極力避けたい。タンヤオのリャンシャンテンにとるのだが、強い部分のリャンメンターツを固定するのが良い。との比較で、場に出にくいを切る。
…となるのだが、園田はではなくを切った。1300点差なので、をリリースしても条件はもちろんクリアしている。
こうしておくことで、本来ならば手の内でを使うはずの、ターツやターツが無いように見せるのが狙いだ。
打点を少し犠牲にすることで待ちが破壊的にアガりやすくなる攻撃魔法
を、園田はここぞという場面で唱えたのだった。
その後、園田はをポン。
を切ってイーシャンテンに。
高宮からが出て、
園田はチー。
を切ってテンパイにとった。
もちろん、チーをすればテンパイ。しかも待ちは両面だから、鳴き判断自体は普通だと感じる。トップ争いをしている高宮は、テンパイが入っていたら本線でも勝負してくれる可能性は高い。
しかし、この切り順になることを考慮して、園田はをスルーした方がよかったのではないだろうか。
が先切りしてあるを鳴いてを手出ししまうと、ターツが十分だったことがバレてしまう(で先切りして撒き餌をするくらい、ほかのターツが揃っていたと読める)うえ、チーした後の最終手出しがになってしまう。タンヤオが絡むマタギの待ちはしかない。
せっかく「出アガリ率劇的アップ」の攻撃魔法をソウズターツにかけたからには、イーシャンテンで使ってしまわずに、最後の待ちにできるだけ取っておきたい。そのためにもうワンポイントだけ工夫すべきだったように感じる。
さて、テンパイした園田がなかなかアガれないまま、終盤に突入。
ここで白鳥、園田に通りそうで高宮に危険なを切る。「対面から遠隔アシスト」の補助魔法を使った。
白鳥はこの半荘、自分の着順アップは絶望的になってしまった。それならば、現在首位のドリブンズよりも、他チームがトップを取った方が良い。
的確に相手のブロックが読めるからこそ、このアシストができる。
これを高宮がポン。これでイーシャンテン。
高宮、15巡目にテンパイが入る。待ちは。
親番の滝沢も、
最後のツモ番でカンを引いてテンパイ!滝沢、高宮、園田の3人テンパイで流局でもう1局か…
と、思ったそのとき、
「パシッ」
東場で聞いたことのある音が、再び卓上に響いた。
ハイテイで園田のツモアガリ!!見事再逆転で、自身ファイナルシリーズ初のトップを飾った。
点棒のやり取りを終えた園田は、「フゥーッ」と一度、大きく肩で息をした。
勝利インタビューで、「次の試合までも研鑽を積み重ねていく」と語った園田。
こんなにも強いのに、魔法使い・園田賢はまだまだ「魔法の修行」を積み上げていくようだ。
今日の素晴らしい試合内容を目の当たりにして、『早く次の魔法が見たい!』と、誰もが心待ちにしているに違いない。
前半12戦でみるみるうちにポイントを積み上げ、4位スタートから首位で折り返した赤坂ドリブンズ。
ファイナルシリーズ後半も、ドリブンズの麻雀の魔力から、目が離せない。
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京大法学部卒の元塾講師。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている、麻雀界では知る人ぞ知る異才。「実戦でよく出る!読むだけで勝てる麻雀講義」の著者であり、元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。x:@getawonarashite