極限の条件戦が生んだ波乱の結末 オーディションはいよいよ、1ポイントが明暗を分ける最終局面へ EX風林火山ドラフト会議指名選手オーディション
【2021年6月28日~7月1日】
残り一週間を切り、大詰めを迎えているEX風林火山ドラフト会議指名選手オーディション。滝沢和典が自由契約という衝撃の一報によって、もしかしたらさらに目の色を変えた選手もいるかもしれない。2枠目の指名がオーディション参加者から選ばれるかは不明だが、少なくとも目に止まるチャンスは十分あるはずだ。
7/1に収録、7/2に配信された対局のメンバーは、いずれも準決勝進出が射程圏内にいる4名。ここでの勝ち負けは、麻雀プロ人生を大きく左右するだろう。
7/2配信対局メンバー ※ポイント・消化試合数・順位は開始時のもの
愛内よしえ(日本プロ麻雀協会) 291.5pt 12戦/16戦 16位
小車祥(日本プロ麻雀連盟) 241.5pt 12戦/16戦 24位
中出雄介(麻将連合) 304.8pt 12戦/16戦 12位
浦野修平(日本プロ麻雀連盟) 266.7pt 12戦/16戦 20位
オーディションは初戦からドラマがあった。オーラス、トップ目の小車が親の浦野、子の愛内のリーチに挟まれてハイテイ手番を迎える。点差的に、小車は愛内にハネ満までは打ってもトップ。親に連荘されるよりはマシとばかりに、4枚見え3枚見えで必ず両者に通るではなく、愛内に無スジで親の現物を抜き打った。
小車の狙い通り、愛内がロン。しかし、開かれたのは想像以上の高打点だった。リーチピンフホウテイ三色赤赤に裏が乗って倍満・16000。痛恨の放銃で小車はトップ陥落、中出が僥倖の一勝を挙げた。
中出は2戦目もオーラスの親番でアガリを決め、逆転トップ。2連勝で419.6ポイント、暫定3位まで浮上、準決勝進出に大きく近づいた。
だが、3戦目は小車が中出とトップラスを決める。勝った小車はポイントを300台に乗せ、最終戦へと望みをつないだ。一方、ここまでトップのない愛内・浦野の2人は大きく出遅れてしまった。
4戦目は、中出・小車の一騎打ちの構図が鮮明になるかに思えた。その中出が、東1局でツモり四暗刻のテンパイ。ツモれば準決勝へ王手をかけると言ってもいい、超大物手だ。
しかし、これは浦野のリーチに阻まれ成就ならず。
東4局。トップが欲しい中出が待ちのフリテンリーチをかける。なら高目三色、こちらはなんとリーチ時には全て山にいた。
だが、親番でオリる理由がない浦野が突っ込む。チートイツドラドラ赤を待ちでリーチ。山には残り1枚。
中出がつかんだのはだった。浦野への放銃となると、裏ドラが乗って24000。これで浦野が中出を叩き落とし、トップ目に浮上する。
オーラス、浦野の親番。中出や小車は役満クラスの手をアガらなければ準決勝進出の条件をクリアできない。
愛内のリーチを受けてなお、中出はアガってラスが確定するツモホンイツ赤の満貫をアガリ拒否。この状況が、条件戦ならではの展開を生んだ。
南4局1本場、浦野がリーチピンフツモドラドラ裏の6000は6100オールをツモアガリ。これで他3者に大差をつけたことで、浦野は他3者が超大物手でしかアガれなくなったなか、一人だけ自由にアガリに行ける状況となった。
浦野がリーチと言えば、誰も逆らえない。この立場を最大限に利用した浦野が攻めに攻め、ひたすら連荘を続ける。上家の小車もなんとか対応しようとするが、浦野のテンパイを止められない。
そして、手牌も浦野に味方した。南4局5本場ではリーチ一発メンホン發ドラ赤の24000は25500を小車から出アガリ。
連荘は9本場まで到達し、浦野の持ち点はこの時点で135800点。Mリーグの歴代最高スコアが2020シーズンセミファイナルで佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)が記録した98200点なのだから、それを3万点以上上回るこのスコアの強烈さが伝わろうというものだ。この時点で、浦野のトータルスコアは暫定5位。もちろん、準決勝進出のためにはまだまだ稼ぐつもりだったはずだ。
だが、ここはたまりかねた愛内が仕掛けを入れてタンヤオのみをツモり、試合を終わらせた。このアガリで1400点を失った浦野は、森下をわずか900点下回り、暫定6位で2次予選を終えることとなった。
オーディションの最終盤という極めて特殊な状況が生んだ、浦野の超特大トップによる逆転劇。これも、条件戦の面白さだと言えるだろう。
別卓では大きな動きがあった。6/28から3日連続での参戦となった坂本大志(最高位戦日本プロ麻雀協会)が、2節目・3節目とポイントを積み重ねると4節目で4連勝を達成、445.3ポイントまでスコアを伸ばしたのだ。これで坂本は暫定3位で全日程を消化。準決勝進出へと大きく近づいた。坂本と浦野が準決勝圏内に入ったことで、澤田唯(日本プロ麻雀連盟)今井伸吾(最高位戦日本プロ麻雀協会)は6位以下に押し出され、順位による準決勝進出は逃した。
2次予選は残り3日、ここではいずれも上位陣の直接対決が組まれている。339.1ポイントで暫定8位につける矢島亨(日本プロ麻雀協会)をはじめ、多くの有力選手が試合を残しているだけに、誰が勝ち上がるかは全く分からない。ぜひ、オーディションの最後まで、注目していただきたい。
EX風林火山ニューメンバーオーディションはABEMAプレミアムにて配信中!
7月2日: #愛内よしえ VS #小車祥 VS #中出雄介 VS #浦野修平(1回戦)
https://abema.tv/video/episode/558-1_s1_p45
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。