逆風の中、
勝又健志が作り上げた
美しき1,000点
文・江崎しんのすけ【月曜担当ライター】2023年9月25日
第2試合
東家:勝又健志(EX風林火山)
南家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
西家:東城りお(セガサミーフェニックス)
北家:萩原聖人(TEAM雷電)
Mリーグ2023レギュラーシーズン5日目。
激戦の開幕から、早くも1週間が過ぎた。
第2試合、風林火山からは勝又が出場した。
未だ出場していない選手も多数いる中、勝又はこの試合で既に3回目の出場となる。
チームのポイントゲッターとして毎シーズン活躍している勝又だが、例年シーズン序盤は出場数が少なかった。
実況の日吉プロも「レギュラーシーズンは序盤が肝心」だとよく話しているが、藤沢監督のスタートダッシュを決めたいという意思が、この采配から読み取れる。
しかし東場はチャンスが少なく、勝又はラス目で南場を迎える。
南1局の親番で3着目の東城から3900点の直撃を決め、ラス目は回避したものの、続く1本場では親リーチを萩原に躱されてしまう。
南2局1本場ではリーチ・タンヤオ・赤1の5,200点を出アガる。
振り込んだのがトップ目の瑞原だったため、差は一気に縮まり、勝又はあと少しで2勝目が届く位置で終盤戦に突入した。
南3局、東城の親番。
ガラガラと卓が音を立てる中で、素早い発声が響き渡った。
「ポン」
声の主は勝又だった。瑞原が切った第一打目の発をポン。
チャンタなども見えるが、ポンして中を切ったことから最速でのアガリを目指しているように見える。
打点はほぼ1,000点で、アガっても勝又の着順は変わらず、3着のままオーラスを迎えることになる。
「トップ戦線に入るためには、他の選手にアガらせてはマズイと…」
日吉プロが勝又の思考を拾う。
これ以上点差を開かせずに、オーラスで勝負をかけるという狙いも勿論あるだろう。
ただ、他家との点差をよく見てみると、狙いはそれだけではないことがわかる。
ここで1,000点をアガると、勝又のオーラスでの条件が大きく変わるのだ。
まずはトップ目の瑞原との点差。
現状の差は5,400点なので、1,000点をアガると4,400点になる。
一見大して違わなさそうな差だが、整理してみるとその大きさに気づく。
5,400点差の場合、当然出アガリ5,200点では足りないので、6,400点以上、出現頻度を考えれば満貫を作る必要がある。
ツモアガリの場合、瑞原は子なので1,000-2,000では400点足らず、1,300-2,600が必要。
ドラが2枚以上使えれば特に問題ないが、1枚志かない場合は、平和を付けるか、符を上げるか、もしくは一発や裏ドラなどの偶然役を狙うか、何かしらプラスαが必要になってくる。
ドラが2枚ある場合、1,000-2,000なら鳴いての手作りもやりやすいが、1,300-2,600だと符を気にする必要があるため基本は門前での進行となり、スピードに大きく差が出るだろう。
続いて2着目の萩原。
その差は4,800点。勝又が1,000点をアガると3,800点差になる。
4,800点差の場合は出アガリ5,200点、ツモは1,000-2,000条件だが、3,800点差の場合は3,900点の出アガリでもOKになるし、オーラス萩原は親なので700-1,300のツモアガリでも2着に浮上となる。
700-1,300でも着アップができるというのが魅力的で、仮にオーラスで手牌にドラが全くなくても平和さえ作れればリーチ・ツモ・平和で2着への条件を作ることができる。
ドラが1〜2枚あればトップ目瑞原を逆転する1,000-2,000を目指し、0枚なら700-1,300での2着を目指しつつ裏が乗れば僥倖のトップなど、その場の状況に応じて選択肢を変えることが可能だ。
そして最後がラス目東城との点差。
現状が9,400点差なので、1,000点アガると10,400点差。
10,400差は出アガリ・ツモともに跳満以上じゃないと逆転できず、東城は一人だけ高打点の手作りを強いられることになる。
オーラスは萩原・勝又・瑞原のアガリ競争になると思われるが、仮に勝又が振り込みに回ったとしても8,000点までならラスになることはない。色々なメリットを書いたが、この東城との差を広げることでラス率を下げることが一番大きな理由かもしれない。
萩原は安手での連荘は価値が低いため打点を作ってくる可能性もあるが、万が一萩原とのめくり合いに負け12,000点を放銃しラス落ちしたとしても、1本場で2,000点をアガれば再度3着に復活することも可能だ。