急がば回れ、勝又健志の
「手牌を壊してアガリを近づける」オーラスの捌き術
文・高倉拓馬【火曜担当ライター】2024年11月5日
この日の第2試合は試合時間が40分を切る超スピードゲーム。連荘なし、総局数8局というのもさることながら、全員の打速が凄まじい。
それでいて、4者の麻雀を番組のいち視聴者目線として見ると
「とても見やすい」
この一言に尽きる。
一定のテンポで淡々と切り、副露の際には間をおいて、視聴者が手牌と副露牌にそれぞれ注目できる時間を与えてくれる。「麻雀を見せるプロ」として、私個人としては敬服しかない。
もちろん麻雀も一級品。その中でも、特にこの日気合が入っていたように見えたのはEX風林火山、勝又健志。
解説の朝倉康心プロいわく、「勝又には珍しく、試合前に目をつぶって精神統一をしていた」とのこと。普段日本プロ麻雀連盟でしのぎを削りあっている猿川、寿人が同卓しているため、負けたくない思いがあったのだろうか。
第2試合
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
そんな勝又、東3局1本場にドラ4の大物手が入る。
これが安全牌に詰まった茅森から出アガリ、8000点。
南2局1本場には寿人が一発ツモで2000-4000をあがり、勝又は2着目に。
ここから勝又の、あまりに濃密な10分が幕を開ける。
南3局
トップの寿人と4100点差の勝又。配牌を見ても、正直どういうアガリ形になるかがイメージ出来ない。
イメージがつかなかった手牌が、なんと7巡目にタンヤオ・イーペーコーの1シャンテンに変貌を遂げた。
勝又、ここは先にを打つ。
・がドラ表示牌でがかなり使いづらい
・がかなり安全な牌
この2点が大きい。
自分の手がイーシャンテンとはいえ愚形2つ残り。
そのためリーチ宣言牌となったドラをポンされて一騎打ちムード、となるよりも、先にドラを打って他家の動向を確認し、
①鳴かれれば捌き手への転換や降りを検討
②鳴かれなければ悠々と門前進行
このような展開予測を立てたか。
このにトップ目、親の寿人からポンの声。
これで、展開予測の①「捌き手への転換、場合によっては降り」に展開が向いたと考えられる。
攻めっ気満々の2人より先にテンパイを入れたのは茅森。
ドラのポンは入っているが、ラス目なこともあり、この手を満貫まで伸ばしにゆくリーチ。
そこに勝又が追いつく。タンヤオ、イーペーコーの2600点を茅森から直撃してもオーラストップ目になれないが、ここはダマテンを選択した。
これは「道中で降りる可能性がある」ことが思考のメイン。
茅森は現状ラス目だからあまり戦いたくない位置であるし、寿人もテンパイすればかなり押してくるだろうから、大きな被害を避けるのが目的である。
具体的にはソウズの中ごろの牌を引いてきて降りになるだろうか。一応が3者の現物で、は茅森には比較的通りそうだから、ソウズ引きは迂回できないこともない。
これが両面テンパイで茅森の現物待ちだった寿人から出て、値千金のアガリ!
オーラストップ目に立つ。
そして、勝又が「かわしきるために手牌を崩す」妙手を見せたのが南4局。
寿人と勝又の点差は2100点。2600点の出アガリ、500-1000ツモ、流局時のテンパイ料で変わる。